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女心に、なってみた  作者:
高校一年生。夏。
7/12

不安だらけの学校生活

「幸太、やるぞ」


「おう、今起動する」


 俺は通話アプリを使い、幸太と通話を始める。


 俺は今、話題のFPSゲームをしている。幸田から紹介され、今では中毒プレイヤーになりつつある。


 分かってる。分かってはいる。でも、やりたくない。


 やろうやろうと言って、一つも手をつけていない。


 まあ、本気を出せば三日もあれば終わるだろう。


 こう見えても俺は文字を書くスピードはウサイン・ボルト並だから、今はゲームに集中することにする。


「課題終わったか?」


 ロード画面中に、幸太の進捗状況が気になったので、聞いてみる。


「ん、今やってる」


 ロード画面中にやるとは、中々やり手だと思った。


「そういう所は頭良いよな」


「そういう所はってなんだよ、俺は頭良いし」


「だって前のテストめっちゃひく━━」


「よーし葵、タイマンで決着をつけようじゃないか」


 言葉を遮られてしまった。


 タイマンで決着なんて。というか、なんの決着だよ、別に勝負してるわけじゃないのに。







 

「葵、この点数はなんだ」


「なんで葵は俺らの言うことを聞かないんだ」


「俺は葵を心配して言っているんだ」


「葵のために言っているんだ」


 目の前にいた父さんの姿が、消えていった。


 俺は、幸太とのタイマンに負け、ふて寝していたようだ。


 しかし、最悪な夢だった。


 多分、全部これまでに言われたことなんだろう。正直よく覚えていない。全部聞き流してたし。


 だからって、夢にまで俺を監視してくるなよ。気持ち悪い。


 そんな夢よりも、課題やらないと。また、課題やったのか? って、催促されそう。あの父さんなら。


 ワークを開き、シャーペンをスラスラと進めていたら、ふと考えていた。


 家族って、なんなんだろう。って。


 麻里とかは、寄り添ってくれる人達とか言ってた気がするけど、俺はやっぱりそうは思えない。


 結局は血が繋がっただけのただの他人だ。勝手に期待されて、勉学は絶対に劣ってはいけない。オシャレするのも許されない。


 女の子になったからには、少し憧れていたオシャレというものを自由にしたかったのに。


 これは、本当に家族なのか? と思う。叱るのは家族、親の役目だとは思う。けど、叱られてるだけだったら、心が削れていくのは当たり前だ。


 もちろん、感謝はある。衣食住を提供してくれているのは分かっている。でも、それ以上に恨みが勝ってしまった。


 いつの間にか俺は、ゲームという存在に逃げていた。いや、逃げていたというか、そこに追放されていた、と言っていいだろう。逃げ場という逃げ場も、無かったし。


 ゆう姉は俺の味方で、相談にも乗ってくれる。けど、今は大学のことやらで中々忙しくしているから、迷惑はかけられない。だって、先が長いんだし。


 ただ、寄り添える人が欲しかった。それだけだった。


 色んなことを考えているうちに、日が暮れてきていた。なんと、8時間ぶっ続けでやっていた。


 もう時刻は19時前。そろそろ飯...と言いたいところだが、今の時間はどうせ父さんと母さんが食事をしているんだろう。ゆう姉は外で済ましてくるって言ってたし、俺はまだリビングには降りれないな。


 飯はいいや。もう寝よう。昨日の夜は変な寝方を強要されたせいで全然眠れてないし。


 



「よし、完璧」


 制服に身を包み、一回りをし、スカートをふわっとさせる。


 今日から学校だ。正直、不安だらけだ。


 どんな目で見られるのだろうか。男子達はいつも通りに接してくれるのだろうか。


 足取りが重くなりながらも、玄関を開けた。


「おはよー、葵。制服似合ってる」


「あ、明日香!?なんでここに!?」


「迎えだよ。どうせ一人で教室行けないでしょ」


 玄関の先には同じ制服を着た明日香がいた。スカートが短い。上げているのだろうか。


 明日香は俺より高い身長で、ニヤニヤしながら俺を見下してくる。


 なんだこの顔。まるで、学校行くの不安そうだから来てやった私に感謝しなさい、みたいな顔してる。


 まあ、不安なのは事実だから、今は大人しく受け入れよう。


 俺らを溶かそうとしょうとしているくらい、日が照りついている。


 学校に着く頃には、もう汗がすごい。制服が張り付いて、ちょっと気持ち悪い。


 あと、それ以上にブラの内側の汗がすごい。もう池できるんじゃないか。いやそれは言い過ぎだが、そのくらいのレベルだ。


 明日香と廊下を歩いている最中も、目線を感じる。見かけたことのない生徒が歩いているんだから、まあ物珍しく見るのは普通か。こんな可愛い人が...、いや、なんでもない。


「お、葵。ちゃんと来たな。おはよう」


 教室に入るなり幸田は俺の名前を少しでかい声で叫びやがった。


 周りが一斉に俺に視線を向けてくる。やめろ、怖すぎる。


「「「可愛いー!」」」


 あ、あれ、前もこんな反応見た気がする。


「やめてくれないか、ほんとに...。」


 そんな歓声を無視しながら俺は窓際の席に着いた。


 外は雲一つもない、それはそれはとても綺麗な青空が広がっていた。


 チャイムが鳴ると同時に、中村先生が教室に入ってきた。やっぱり美人だ。羨ましい。


「はい。えーまず、このクラスに可愛くてキュートな子が来ました!」


 


 


 


 




 


 









 

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