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2話

メイドの名前でミスがありました。

訂正します。

正しくはリリです。

(どっちだって変わらない気がしますけど…)

ふぅ…何とか間に合ったか、と恭也は安堵の溜め息をついた。


実際、かなりギリギリだった。

後、数舜遅ければメイドは食われていただろう。


だが、現実では彼は間に合った。

若い2つの命を守ったのだ!

そして、そこで彼ははニヤリと動物的な、破壊的笑みを浮かべた。

「さて、ゴリラ君。キミは彼女達を殺そうとした。なら…」

俺がお前を殺しても、文句は言わないよな?


恭也はすうっと腕を伸ばし、魔獣を指さした。


その所作はあまりに優美。

幻想的な容姿と背中から生える翼と相まって、本当の天使に見える。


彼女達にとっては幸福の。

魔獣にとっては絶望の。


今、この場で追い詰められているのは魔獣の方だった-



魔獣はいまだかつて恐怖を感じたことは無かった。

生まれながらに、獣の王となるべく素質を待った魔獣に敵などいなかった。

気に入らないヤツは食ってしまえばいい。

今まではそうやって生きてきたし、これからもそう生きていくはずだった。


なのに。


魔獣は今"死"の恐怖に震え、身動き1つとれなくなっていた。

それは絶望。

今まで他者に与え続けた感情を自分が味わっている。


グワァァァアアァァァ!!


魔獣の力の限り剣を外し、吼えた。

王として、誰にも負けられない。


だがその虚勢も無慈悲とも思える恭也の一言で、砕け散る。


「〈ホーリー〉」


恭也の体から魔力が溢れ、聖なる力が魔獣に殺到する。


魔獣は消滅した。




「はぁ-、終わったー」

緊張したー、と恭也は座り込む。


だがそこで何の目的で自分が疲れているかを思い出し、メイドに振りかえる。


「大丈夫だったかぁ?怪我ない?」

先ほどの戦闘など無かったかのように、あっけらかんと話す。

メイドの方は戦闘の余韻がまだあるらしく、いささか慌てて返事を返した。

「だ、だだ、大丈夫、です…」

恭也はそのどもりように怖がらせちゃったかな?と思い違いをして、勤めて朗らかに笑って応えた。

「そっか、良かった良かった。…あ、そういえば名前を言って無かったな。俺は高津恭也だ。よろしく」

腕を差し出す。


「あ、はい!よろしくお願いします、タカツキョウヤ様。私はメイドのリリです。………あの、お手を握ってもよろしいのですか…?」

おずおずと上目使いで恭也を見上げるリリに、胸にこみ上げてくる何かを抑え、顔には出さず苦笑気味の笑みを作り、リリの手をとった。

「いいに決まってるだろ!後恭也でいい。様もいらない。その代わりリリのことも呼び捨てにするから、さ?」

「し、しかし…伝説のエルフ様なのに私のような者が……あうっ」

許可をしようとしないリリの頭を恭也はぺしっとチョップした。

「いーらーなーいーのー。アーユーオーケー!?」

リリには恭也が何を言ってるかよく分からなかったが、勢いにおされ思わず「はい」と返事をしてしまった。


「よろしい。……ところでさ、良いの?あの子放置してて?」

恭也がリリの後ろにいる、ずっと目を開けていない子を指差して言った。


するとそこでメイドがハッとして、

「あーーーーっ!姫様ぁ!」

悲鳴のような声を上げた。


「ぅおっ!?」

「姫様がぁ!うぅ私としたことが…本来の目的を忘れるなんて……。キョウヤさん!どうか姫様を助けて下さい!!」

今度はそう叫んで頭を思いっきりさげた。

「お、おい、ちょっとリリ…」



急に言われて戸惑う恭也に、リリが彼の腕すがりつく。

「お願いします!何でも致します!お礼だって致します!だからどうか!」

気色ばむリリは知らず知らずのうちに、恭也の肘をものすごい力で握り締めた。

リリの細腕のどこからそんな力が出るのか、恭也の腕は完璧にキメられていた。

「わ、分かったから!助けるから!頑張るから!だからこの腕ほどいてーっ!」

恭也の悲痛な叫びが静謐な森の中にこだまする。

彼の腕の肘から下は完全に血の気を失っていた。

合掌。




「落ち着いた?」

「はい……」

ぽっと顔を赤く染め、恥ずかしそうに頬を両手でおさえるリリはさっきの力はどこへやったのか、普通の乙女にしか見えなかった。恭也は何故か女性の不思議を垣間見たような気がした。


「はぁ…」

「す、すいません…」

申し訳なさそうにネコミミをしゅんと垂らすリリに、再びこみ上げてきた感情ぐっとを抑え話を進めようと彼女に問う。

「さて、訳も分からず〈エスナ〉を使ってマヒ?を解いたけど、まだその子のこと何も知らんから説明して?」

「あ、はい。彼女は我がエスタノーヴァの姫君であらせられる……ん?どうしました?」

「いや、ちょっとね…、気にしないで先進めて………再びのテンプレ…!」

「?…えーと、じゃ先、進めますね?…彼女は勇者のアルジェリア様です。アルジェリア様と私は魔王を倒すため、

全ての古代魔法が使えるという伝説のエルフ様を探す旅に出たのでございます。色々な場所を回り、ある国でこの森にいるというお告げを受けました。そして簡易精霊に捜索依頼し、数日探し回った結果見事キョウヤさんを見つけることが出来たのでございます。その後アルジェリア様をお連れしようとした所魔獣に襲われ、姫様はヤツのマヒ毒にやられたのです」

「なる程…ところで今更何だけど俺のことエルフだと思ってるみたいだけど、確証ないぞ?」

「何をおっしゃいます!?そのお姿、強さ、まさに伝説そのままではございませんか!道具もなしに魔法を詠唱無しで使えるなんて普通はあり得ません!」

「あーまぁ普通じゃないし…ぶっちゃけ俺この世界の"人間"じゃないし」

「はい!存じております!エルフ様ですね!」

「あ、間違えた……あーもうエルフでいいか」

「はい!」

などと恭也とリリが話し込んでいるとアルジェリアが目を覚ました。


「うぅーん、私は一体…?」

その声にいち早く反応したのはリリだった。

「姫様!もう大丈夫なのですか!?」

「んん………はっ!リリ!魔獣は!魔獣はどうした!」

少し寝ぼけていたアルジェリアは少したった後、自分が一瞬で生死が分かれるような戦いにいたことを思い出し、慌てて聞いた。

「姫様、彼の魔獣はこの、エルフ様であるキョウヤさんが倒して下さいました!」

一撃でしたっ!

と興奮気味に話してくるメイドを差し置き、エルフと紹介された人物を見る。

確かに、と伝説そのものといった感じの容姿に納得する。


「そうですか…助けて頂いたようで、ありがとうございます。私はアルジェリア・スクラン・エスタノーヴァです」

「いえいえ、俺は高津恭也。恭也が名前な。恭也でいいぞ。後敬語要らない」

「そうで……そうか、ではそうさせてもらうよ。私もジェリでいい。よろしくキョウヤ」

「あぁ、よろしくジェリ」

そこまで話して、にこりと笑いあう2人。

恭也はここで、ジェリという姫君の容姿を確認して見た。

金髪碧眼で、綺麗な髪はうなじあたりで切られており、一見すると少年ようであもあった。

その美しい容姿を包むのは、部分部分を覆った無骨な防具である。

あまり重いのはつけられないのか、動きやすさ重視で薄そうだ。

だが防具の一つ一つが魔力を帯びていることを考えると、優れたモノなのだろう。


「どうした?」

じろじろと見つめるキョウヤに訝しりながら、尋ねる。

キョウヤは少し慌てて、

「あ、やその防具が…」

と言った。


「防具?…そうか、キョウヤには分かるのか…そうコレは我が王国の由緒正しい防具だ。身に着けるだけで弱い魔法を無力化出来るんだ」

「へ、へぇー…」

「でも良く分かったね?帯びている魔力は本当に微弱なものなのに…さすが伝説といったところか」

「は、はぁ……なぁ…その伝説っての、教えてくれる?」

「伝説のこと?それなら私よりも…」

とそこでジェリはリリを指さした。


「わ、私ですか!?」

突然指名を受けたリリは、自分を指差し慌てた。

「聞かせてくれる?」

微笑みながらキョウヤがリリに頼む。


再びリリが頬を赤らめる。

「は、はい……その伝説は今より昔、正確にいつかは分かっていないのですが…まぁ所詮伝説ですから…自らを魔王と呼んだ、ある魔獣の出現によって始まります…」




-この世界は当時、国などなく人間と全ての魔族が仲良く共存していた。

お互いに助け合い、世界は1つの理想郷であった。

しかしそれは"魔王"と呼ばれる存在によって激変する。

魔王は魔獣という強大なしもべを引き連れ、人間と魔族を侵略した。

人間も魔族も必死に戦ったが歯が立たず、為すすべもなく凶刃に倒れていった。

世界に暗黒の時代が訪れ、このまま破滅されるかと思われた…


しかし神はまだ人間達を見捨てなかった。

救世主が誕生したのだ。


魔獣で覆われた大地に光を照らすがごとく、圧倒的な力で敵を討ち滅ぼすエルフのだった。

その姿に多くのモノ達が集った。

そしてエルフは言った。

この戦いに勝つためには魔王を討ち滅ぼさねばならない。

そのため我とともに戦ってくれる勇者が必要だ。

人間の王子よ、我とともに戦ってくれ。

その後人間の勇者とエルフは魔王を倒し、この世界に平和がもたらされた-



「…と言うのが、この世界に伝わる伝説です。これがあるため人間は他の種族よりも優遇されているんですよ?」

「まぁ、それを盾にわがままを押し通そうとする輩が後を絶たないけど…」

「はは…。どこの世界でもそんなヤツはいるんだな。…そっか、大体分かったけど…ね、エルフって他にいないの?」

「キョウヤさん以外ですか?でしたらいませんよ?ダークエルフっていう種族ならいますが…」

「ほぇー!ダークエルフまでいんの?」

「ああ、だけどダークエルフは地下にいるから見たことある人ほとんどいないけどね」

「あ、でも私と姫様はありますよ?使節に赴かれてきたのを対応しましたから。とても気難しい方でしたね」

「ふーん…あー、あれ?そういやなんで魔王を倒す旅なんぞを?捕まったんだろ?」

「それがな…なんと魔王が復活してしまったんだ」

「何故?」

「理由は分かりません。魔王自身復讐すると言ってきましたし、魔獣の活動が活発ですし、まず間違いないかと」

「え、なに?魔王に会ったの?」

「いや、会ってはいないんだ。魔獣が伝言して来たんだ。人語を解する魔獣だったから、とても高位の個体なのだろう」「そうなんですよ、だから早く魔王を倒しませんと」

「あぁ、そうだな。頑張ろうキョウヤ!」

「…いつのまにか俺が魔王退治に行くことが決定ずけられてますがな…」

「えっ!?行って下さらないんですか!?」「そ、そうなのか…」

「あぁ、いや手伝うよ魔王退治。…………とりあえず帰るための手掛かりがそれしかないからな…」

「「ほ…」」

2人は安堵の溜め息をついた。


「ではさっそく城に帰りましょう。勇者様にお会いして頂かなけば」

「うん、そうだね。兄様も待ってる」「兄様?兄ちゃん勇者なの?」

恭也は首を傾げつつジェリに問うた。

ジェリはうんっと頷いた。

「兄様は長子だから」


今ひとつ意味が分かっていない恭也を見て、リリは補足した。

「姫様、王子様は勇者直系の子孫だと言われています。」

「ああ、そういうことか」

得心がいったとばかりに頷く恭也。


「納得頂いたかな?じゃ、我が城へ行くとしよう!」

ジェリの言葉にリリがそうですね、と相づちを打った後、

「同じエスタノーヴァ領内と言っても馬車で5日は掛かりますからね」


5日という言葉に恭也びっくり。

「うぇ、そんなかかんの!?」


リリは恭也が何をそんなに驚いているのか分からず、小首を傾げキョトっとしている。

「そうですよ?どんなに頑張ってもそのくらい掛かります」

ジェリも同じくキョトンとしている。


「えーっ?時間の無駄だろう?もっとぱーと行こうぜ?飛行機みたく空飛べない?」

「ヒコーキ……?」リリが今だかつて聞いたコトのない言葉に小首を傾げた。

それは人を乗せて空を飛ぶのでしょうか?聞いたことありません…エルフ様の住まう地と云われる天界のものなのでしょうか…?


ジェリもリリと似たような反応だった。

やっぱないかー、車みたいのでも良いんだけどな…何か俺の能力使えないかな?などと恭也は1人考えあるアイデアを思いついた。

「そうだ、召喚しよう!」



その宣言にリリもジェリも怪訝な顔した。


召喚-


恭也の言ったその言葉が自分たちの考えている『精霊を呼ぶ』と言うことなら、それは不可能に近いことだからだ。


精霊は気難しい存在で呼び出そうとしても自分より弱かったり、格が低かったりすると相手にしてくれないからだ。

精霊自体相当強いため、なかなか手懐けられない。


だから召喚など成功したモノはほとんどいない。



「よーし、じゃ召喚するぞ!危ないから離れてな」


そう言ったきり集中しだす恭也。

2人はそれを無理だと言うことが出来なかった。

いや、言いたくても言えなかった。

2人とも圧倒されていた。

恭也のその凄まじい魔力に。

「我が名は恭也!我が呼びかけに応えよ!大地の精霊フェンリル!」

恭也がかっと目を見開き、魔力を一気に解放した瞬間、恭也の前方に魔法陣が浮き出した。


やがて。

大地が、天が震え、雷鳴が轟いた。


魔法陣からとんでもない量の光が溢れ、ジェリもリリも嵐のような大地の胎動に顔を手で庇いつつ目を凝らしその光景を見つづけようした。

そして、光と振動が止むと魔法陣の上に立っていたのは…


見たことも無いほど、大きな四本足の美しい狐のような獣。


大地の精霊フェンリルだった。

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