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ブルーローズ

 ブラウスのボタンを外し胸をはだけさせると、右肩に青い薔薇のタトゥーが現れた。ブルーローズ……今夜ようやく君を抱くことが出来る。店でナンバーワン人気の君とここまでこぎつけるのに、俺は相当な金をつぎ込んだ。

 君がそっと目を閉じる。美しい顔だ……。

 三日と空けずに店へと通い、ときには君の望むままに高級ブランド品を買い与えた。すでに会社からはかなりの額を前借りしていてる。それもすべては今夜、君を抱くため。艶やかに光る唇にゆっくりとおのれの口を近づける。甘い吐息が俺のハートを酔わせる……。


 と、そのとき。俺は君の愛らしい鼻から一本の鼻毛が飛び出している事に気づいた。太く、長く、そして黒々と立派な鼻毛だ。メイクのとき見落としたのだろうか? しばらくその鼻毛を見つめるうちに自分が性欲とは全く別の欲求にとらわれていることに気づいた。――抜きたい。この鼻毛を抜いてみたい。いやダメだ、そんなことをしたら君は怒ってこの部屋から出ていってしまうに違いない。そうなればすべては水の泡、今までなんの為に……いや、しかし。

 理性とは裏腹に、俺の指は震えながら君の鼻先へと向かった。やめろ、やめるんだ。しかし俺は、ふつふつとわき上がるこの欲求を制御できない。ああ、だめだ。俺はどうしてもこの鼻毛が抜きたいのだ。指先にやわらかな鼻息を感じる。意を決し、俺は親指と人差し指の爪を器用に使ってその鼻毛を一気に引き抜いた。


 ぷち


 快感で、体が震えた。やった、やったぞ、俺はとうとう自分の欲望のままにしてやった。ははは、見ろよ、この女の驚いた顔。ざまあみやがれ。

 やがてブルーローズは、恨みがましい顔で俺を見上げると、ひとこと言った。


 ひっくしょん

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