第98話 厄介ごと
暴動鎮圧から二日経った一月三日。ようやく戦力が集まったのか、それとも、これ以上待っても無駄だと判断したのか、ギルドは朝早くから、北東開拓拠点で共に戦う意思を示した開拓者達を召集した。
しかし、ギルドの中に新たな仲間が全員集まった時、そのあまりの少なさにオレは内心落胆した。人数は十二人。チーム数は四人チームが三つ。しかも、まだ戦い慣れていなさそうな者までちらほらといる。どうやら後者だったようだ。
「なあ、本当に戦えるか不安な奴が何人かいるんだが、どうしてそんな奴がここにいるんだ?」
「ああ、それはね。たぶん、ギャンブルで借金を作ったから、とかだろうね。そんな奴らの尻拭いをする、こっちの身にもなって欲しいもんだよ」
オレの疑問に対してアンヌは渋い顔で答え、深いため息をついた。確かに頭が痛くなりそうな問題だ。ただ、頼りになるチームがいるのも事実だ。『鋼の戦士』から派遣されたチームで、アレックスがリーダーを務めている。
いざという時は、彼らに相当な負担がかかることになるだろう。彼らもそのことは分かっているようで、口数少なく、闘志に満ちた表情で、ギルドマスターが姿を現わすのを待っていた。共に何度か討伐依頼をこなしたことがあるから、彼らの実力は知っている。彼らは大丈夫だろう。
問題はそれ以外のチームだな。他のチームの、頼りなさそうな、あるいは一癖ありそうな面々を見て、思わず眉間にシワが寄った。だが、さらなる厄介ごとが、開拓者ギルドのドアベルを乱暴に鳴らしてやって来た。
最初に入って来たのは顔に刺青がある大柄な男だった。両サイドを刈り上げた短い金髪と、皮鎧の上からでも分かるほど鍛え上げられた肉体が、男の威圧感をさらに強いものにしていた。すぐ後に入って来た二人の子分も、中々に柄が悪そうだ。
そして、少し距離を置いて、見覚えのある少女が最後に入って来た。『星の円卓』所属のツバキだ。ということは、他の三人も『星の円卓』に所属しているのだろうか。それにしても、あまり仲が良いようには見えないな。
「おい、酒とメシを持ってこい。今すぐにだ。良い女は、ちっ、いねえか。おい、そこの女。お前がここに来て、俺の酒を入れろ!」
「そんなこと、している暇、ない。――北東開拓拠点の、開拓者の追加募集を、受けに来た。それと、ギルドマスターは、いるかしら。ギルドマスターに、リーダーからの伝言がある」
刺青の男はテーブル席に座って、横柄な態度でレベッカを指名したが、ツバキが横からそれを却下して、淡々と簡潔に用件を伝えてきた。刺青の男はあからさまに機嫌を悪くしたが、ツバキは一切意に介することなく、受付で手続きを進めていく。
ギルドの中の雰囲気は、あの四人が入って来てから明らかに悪くなった。この場にいるほとんどの人間が、あの四人に敵意を向けている。それもそうだろう。元々あまり評判が良くなかったらしいところに、『白銀の塔事件』があって、さらに評判は悪化していた。
酒盛りを始めて騒ぐ刺青の男と子分二人、それに対して我関せずの態度をとるツバキ。この四人と共にこれから、北東開拓拠点で戦わなければならないのか。そう考えただけでオレは気が遠くなりそうだった。
次回は1月12日に公開予定です。
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