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第92話 戦いの舞踏会

 八日目の朝、夜明け前から降り続ける雪は視界を遮り、巡回警備をしているオレ達の体温を奪っていく。さすがにいつもの巡回ルートは危険だと判断されたのか、今日は約半分の距離しかない別のルートを巡回している。


 先頭を歩くジャックがハンドサインを出した。後ろ姿からかなり焦っているのが伝わってくる。オレ達は音を立てないようにしつつ、急いで身を隠した。幸いにも今いる場所は森の中、身を隠す場所には困らなかった。


 オレ達が身を隠してすぐに、はっきりとした足音が聞こえてきて、雪のカーテンの向こう側から、ぼんやりとした影がいくつか見えてきた。影は徐々に近付いてきて、やがてその正体をはっきりと見せた。


 機敏な剣ゴブリンが二体、先頭を歩き、屈強なオークがそれに続く。オークの数は四体。さらにその後ろにぴったりと、三体の弓ゴブリンと一体の槍ゴブリンがついてきている。先日の深夜、北東開拓拠点を攻めてきた奴らと同じ種族の魔物だ。


 そして、魔物の集団の先頭が、左右に分かれたオレ達の間を通ろうとしたその瞬間、キャロラインの合図と共に奇襲をしかけた。オレとマキナが先頭の剣ゴブリンを、瞬く間に剣と斧で倒すと、アンヌとキャロラインがクロスボウで、弓ゴブリンを二体始末した。


 魔物の集団はそれでも動揺することなく、四体のオークは互いの背後をカバーしあうように、冷静かつ迅速に円陣を組んだ。残り一体の弓ゴブリンは素早く茂みに隠れ、槍ゴブリンも周囲を警戒しながら、じりじりと円陣の方へ後退していく。


 四体のオーク戦士は盾を構えて守りを固めている。これは長期戦になるか。そう考えていたオレの横を、炎の弾丸が通り過ぎていった。炎の弾丸は一体のオーク戦士の盾に命中した。魔法使いの存在に動揺したのか、敵の守りにわずかな隙が生じた。


 同時に、マキナが雪を蹴散らしながら、オーク戦士達の円陣へと一息に迫った。炎の弾丸を受けたオーク戦士Aは、何とかマキナの接近を阻止しようと、一歩前に出て槍を突き出した。だが、マキナは体を捻って紙一重で槍を回避し、そのまま体の捻りを利用して斧を振り下ろした。


 攻撃に転じていたオーク戦士Aは、マキナの振り下ろし攻撃をまともに受け、その場にうつぶせになって倒れた。それを見たオーク戦士Bは怒声を上げ、マキナに斬りかからんと剣を振り上げた。


 しかし、マキナに少し遅れて円陣に接近していたオレは、『鉄壁の盾』を発動して、オーク戦士Bの重い一撃を正面から受け止めた。オレを厄介な相手だと思ったのか、先にオレを殺そうと、そのまま再び剣を振り上げた。


 オレは回避しようとも、スキルを発動しようともせず、その場にしゃがみ込んだ。その直後、オレの頭上でマキナの斧がオーク戦士Bの剣と激突した。マキナの斧はオーク戦士Bの剣を折って、剣の主の胴体を横一文字に叩き斬った。


 オーク戦士Bの死を目にして、オーク戦士CとDは完全に浮き足立った。槍ゴブリンはヤケになってこちらに突っ込んできたが、マキナがあっさりとそいつの首をはねた。そして、彼女は止まることなく流れるように、オーク戦士Cへ斬りかかった。


 オーク戦士Cは辛うじてマキナの攻撃を盾で防いだが、明らかに力負けしていた。オーク戦士Dは助けに入ろうとして、その直前にエマニエルの魔法で焼き殺された。同時に、オレはマキナを狙った矢を盾で防ぎ、遠くから矢を放ってきた弓ゴブリンが、ジャックに背中を刺されて死んだのを見た。


 オーク戦士Cは、最後の一体となっても戦い続けている。動きの良さから察するに、リーダー格のようだ。そんな奴を相手にマキナは、華麗に舞い、軽々と斧を振るう。オーク戦士Cも必死に食らいつく。その光景はまるで、戦いの舞踏会だ。


 しかし、ほどなくして舞踏会も終わりを迎えた。凍った雪に足を滑らせ、無防備になったオーク戦士Cの頭に、マキナの斧が容赦なく振り下ろされたからだ。そして、肉と骨が粉砕される音が、森の中に響いていった。


ツイッターもよろしくお願いします!

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