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第76話 マキナ

 一つの拍手が湧き起こった。オレの言葉を聞いていたカネキが、短剣を持ちながら器用に拍手していた。その顔に、嘲笑を浮かべながら。


「素晴らしい。思わず涙が出そうになりましたよ。それで、どうするんですか。私がその気になれば、彼女はまた私の操り人形です。そして、『永遠の炉火』は今度こそ私のものになります」


 カネキはあからさまに挑発的な態度を取った。しかし、その行動と言葉はすでに予想済みだった。オレは視界の端で、何らかのトラブルで折れたらしいカネキの弓が、床に転がっているのを確認してから、あえて余裕の笑みを浮かべてみせた。


「それはどうだろうな。本当はお前だって、そんなに余裕はないんだろう。それもそうだ。だって、今のお前は全身ぼろぼろで弓まで失っている。その上、もうすぐオレの味方がここに来るからな」


 おそらく、『永遠の炉火』を起動しようとして暴走しかけ、その時にダメージを負った上に、弓までをも失ったのだろう。どうやら図星だったらしく、カネキは苦い顔をした。それを見たオレは、何だか愉快な気分になりながら話を続けた。


「味方が来たら、お前を倒して、『永遠の炉火』を破壊する。そうすれば、お前は『永遠の炉火』を手に入れられなくなる。マキナは自分のことを諦めなくてもよくなる」


 マキナが最後の言葉にぴくりと反応した。彼女の瞳についに、意思と、そして希望の光が、はっきりと宿った。彼女が生きることに前向きになってくれたのなら、あとは味方が来るまで、オレがカネキを足止めするだけだ。


「不愉快ですねえ。確かに、そうなれば私の計画は破綻します。ですが、お前ごときが私を足止め出来ると考えていること、実に不愉快ですねえ!」


 カネキは目を血走らせたかと思うと、瞬く間にオレとの間合いを詰め、短剣でオレを刺し殺しにきた。オレはカネキの殺気に気圧されながらも、剣でカネキの突きをギリギリで受けた。しかし、想像以上の突きの威力に、剣が弾き飛ばされ、オレも石板に叩きつけられた。


「弓がない私なら何とかなると思いましたか。お前とは文字通りレベルが違うんですよ。さあ、マキナよ。『永遠へ至る鍵』よ。今度こそ、私に『永遠の炉火』の力を。無駄な抵抗はするなよ。お前はただの、私の道具なんだからな!」


 カネキはマキナの首を片手で締め上げ、彼女を無理矢理立ち上がらせた。オレは奴の蛮行を止めようとしたが、体が言うことを聞かない。最上階に来るまでの疲労と、来た後のダメージで、オレの体はもう限界だった。


「断る」


 オレはまた『あの時』のように、ただ見ていることしか出来ないのか。そう絶望していると、マキナはカネキの腕を両手で掴んだ。彼女の絞り出したような、しかし、はっきりとした拒絶の言葉。カネキは苦悶の声を上げた。


「私は、『永遠へ至る鍵』でも、お前の道具でも、ない!」


 カネキは短剣を投げ捨て、マキナを引き剥がそうとした。だが、マキナは引き剥がされることなく、むしろ、腕を掴んだまま、カネキと背中合わせになった。そして、オレの驚きの視線が向けられる中、彼女は背負い投げで、カネキを床に叩きつけたのだ。あまりの衝撃に、床が大きくひび割れた!


「私は、マキナだ!」


次回は9月8日に公開予定です。

ツイッターもよろしくお願いします!

https://twitter.com/nakamurayuta26


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