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第74話 愚かなる者達

 鎖が放つ光が強くなると共に、フロア全体の温度が上昇していく。剣と盾をそっと床に置き、そのまま床に座って頬を伝う汗をぬぐった。オレはまだ倒れるわけにはいかない。一連の事件の真相を、カネキから聞き出さなければ。


「機密漏洩から始まったこの事件――いや、もうテロといった方がいいか。ブルク・ダム遺跡、ベルンブルクで起きたことは、お前の計画とやらが原因か」


「ええ、そうですとも。馬鹿なドワーフ、間抜けな調査隊、世間知らずの魔法使いには、実に笑わせてくれましたよ。金や地位、名誉をちらつかせただけで、簡単に踊ってくれましたからねえ」


 カネキはオレの問いににやにや笑いながら答えた。オレは頭に血が上りそうになったが、歯を食いしばり、拳を強く握りしめて堪えた。カネキはよほど気分が良いらしく、聞かれてもいないのにべらべらと話を続ける。


「馬鹿といえば、旧ベルンブルクのドワーフ共も救いようがありませんねえ。『永遠の炉火』を完成させるために、邪神の力まで借りたというのに。邪神の思惑通りに『永遠の炉火』が暴走し、その時の被害が一因となって破滅したんですから」


 旧ベルンブルクは邪神と手を組んで、『永遠の炉火』を完成させた。この情報にはさすがに驚かされた。世界の全てを不毛の砂漠にする前より、邪神は暗躍していたのだ。


「『永遠の炉火』が暴走した後、旧ベルンブルクはいちじるしく衰退しました。本来の力であれば対抗出来たであろう、邪神の砂漠化の呪いに、のみこまれてしまうほどに。それでも彼らは諦められなかった」


 カネキは皮肉をこめた笑みを貼り付け、マキナの方に視線をやる。鎖の光は徐々に弱くなってきていた。それに伴ってフロアの温度も下がってきている。マキナの指先がぴくりと動いたのが遠目に見えた。


「この子も諦めが悪いですねえ。自分が破棄されず、自己防衛機能まで追加されて、ブルク・ダム遺跡の奥底に封印されていた理由。それは生みの親の愛ではなく、永遠の栄光への執着心だと、とっくに理解しているでしょうに」


 今度はマキナのまぶたが微かに動き、そして、涙が零れ落ちた。それを目にしたカネキは、嗜虐的な笑みをますます深めた。それでもなお、マキナは自力で意識を取り戻しつつあった。


「マキナを『テイミング』出来たのは、彼女が『特別限定モンスター』なのを知っていたからだな。そもそも、『永遠の炉火』に関する情報は全て機密扱いで、最初から知りようがなかったはずだ」


 オレは冷静さを保つように努めつつ、なるべく落ち着いた口調でそう聞いた。『特別限定モンスター』とは、限られた期間内に特定の条件を満たすことで仲間に出来る、非常に強力な仲間モンスターのことだ。なお、期間と条件についての情報は公開されていない。


「おっと、それは企業秘密です。さて、次でいよいよ仕上げです。これが終わったら、この子が壊れた後の代わりを、急いで用意しないといけませんねえ」


 冷酷にそう言い放ったカネキは、オレに背を向けて再び鎖へと手を伸ばした。そんな奴の背にオレは盾をぶん投げてやった。奴は反射的に横にジャンプして回避した。だが、それこそオレの狙い通りだった。奴が石板から離れた隙に、オレは石板に急接近しつつ、『疾風突き』を発動した。


次回は8月25日に公開予定です。

ツイッターもよろしくお願いします!

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