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第71話 赤黒い光

 自分でも驚くほど、オレは自分の手で人を殺したのだという事実を、冷静に受け止められていた。覚悟していたからなのか、戦いの高揚感で頭がおかしくなっているのか、今は分からない。


 オレの感情とは関係なしに、戦いは進んでいく。完成したエマニエルの魔法が次々と敵を葬っていき、勝敗を決しつつあった。一階はもう制圧したとみなしたのか、一部のドワーフ騎士が螺旋階段を上り始めた。先行した彼らを追ってすぐに、オレを含めた十数人が後に続いた。


 階段を上り続けている間、オレはマキナとカネキのことを考えていた。目撃者によると、二人は数人のドワーフ近衛兵を従えて、『白銀の塔』の中へと入っていったという。一階にはいなかったので、おそらく最上階にいるのだろう。


 だが、会ったところで何が出来るだろうか。カネキとドワーフ近衛兵を倒せたとして、どうやってマキナをカネキの『テイミング』から解放するのか。そもそも、『永遠の炉火』の正体は何なのか。人の命を奪う恐ろしい永久機関なのに、何故マキナも誰も知らないのか。


 マキナがカネキに『テイミング』されたのは、『永遠の炉火』に遠隔アクセス出来る、あのとんでもない力が原因でもあり、オレの予想が正しければ、条件でもあるのだろう。ただ、カネキはどうやってその条件を知ったのか。


 考えれば考えるほど、今のマキナの立場がいかに辛く、そして悪いものであるか分かるばかりで、具体的な解決策は何も思いつかなかった。どんな言葉をかけても、今の彼女には届かないだろう。


 あれこれと必死に考えている内に、最初のアーチ状の橋に辿り着いた。当然ながら誰もが先を争うように渡ろうとするが、頭上から鳥型の機械兵が急降下で接近し、鋭いくちばしで攻撃してきた。


 さらに、橋の向こう側から犬型までもが走って来て、足に噛みついて橋の下に落とそうとするのだから、たまったものではない。上と下の同時攻撃に手を焼いたオレ達は、橋の真ん中に集まって守りを固めた。


 しかし、後になって考えてみるとこの時、敵の罠にまんまと引っかかってしまっていた。オレは鳥型のくちばしから身を守るため、頭上を見上げていたのだが、ずっと上の方から何かが落ちてくるのが見えた。


 最初は増援に来た鳥型かと思ったが、すぐに違うと分かった。なぜなら、あまりにも大きすぎるからだ。正体もすぐに分かった。なぜなら、ブルク・ダム遺跡で戦った、あの『ガーディアン』だからだ!


「みんな、上だ。今すぐここから逃げるんだ!」


 オレはそう叫びながら『逆襲の盾』で目の前の犬型をぶっ飛ばし、そのまま前へ体を投げ出した。直後、背後から悲鳴とすさまじい轟音が聞こえた。同時に激しい揺れに襲われ、オレの体はごろごろと前に転がった。


 オレはすぐさま起き上がり、橋があった方を見た。上から落ちてきた『ガーディアン』は橋を破壊し、一階の戦場のど真ん中に落下していた。幸いにも下敷きになった者はいないようだが、明らかに動揺していて戦いどころではなくなっていた。


 これは一時撤退もありうるか。オレがそう考えたその時だった。上の方でまた異変が起きたのだ。禍々しい赤黒い光が、塔の内部をくまなく照らして真っ赤に染めたのだ。上の方から放たれる赤黒い光を見て、オレは瞬時にその光の正体に気付いた。同時に、撤退する気も一切なくなった。


次回は8月11日に公開予定です。

ツイッターもよろしくお願いします!

https://twitter.com/nakamurayuta26


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