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第7話 初めての戦闘(3)

 戦場に突撃して最初にオレが攻撃することにしたのは、三体のゴブリン達の中で、連携している時にぎこちない動きが最も多かった剣ゴブリンだった。ゴブリン達はオレの突然の乱入に対して驚き、やや浮足立った。結果として、僅かに反応が遅れた剣ゴブリンが少し孤立する形になった。


 オレはそんな剣ゴブリンとの距離をあっという間に詰めると、そのまま短剣を右から左へ横に振るった。剣ゴブリンは辛うじてオレの攻撃を防いだが、僅かに体勢が崩れた。その隙を見逃さず、さらにもう一度、今度は左から右へ横に振るった。


 武器を使った戦いの訓練などしたことがないのに、短剣をまるで体の一部であるかのように扱えている。さっき習得した『剣の心得』というスキルの効果だ。


 剣ゴブリンが体勢を立て直す前に、もう一つのスキルを発動した。オレは短剣で奴の喉を素早く突き刺した。スキル『疾風突き』をまともに受けた剣ゴブリンは、真っ赤な血を噴き出しながら仰向けに倒れて絶命した。


 それを見た斧ゴブリンは怒り狂ってオレに襲い掛かってきた。スキル『剣の心得』の効果でどうにか斧ゴブリンの激しい攻撃に対応出来ているものの、攻撃を防ぐのが精一杯で、このままではやがて殺されてしまうのははっきりしていた。


 だが、一対三から二対二になったことにより、戦況は徐々にではあるが確実にこちらが有利な方へと変化していった。防戦一方のオレとは対照的に、護衛はさっきまでの苦戦が噓のように槍ゴブリンを圧倒していた。


 槍ゴブリンが倒されそうなことに気が付いた斧ゴブリンは、どうやら冷静さを取り戻したようで、弱いオレは一旦放っておいて槍ゴブリンを助けに行くことにしたらしく、斧を大振りして力任せにオレをぶっ飛ばした後に、急いで槍ゴブリンを助けようとオレに背を向けた。


 しかし、そうさせるわけにはいかない。オレはすぐに立ち上がって斧ゴブリンの背に飛びかかった。相手もこの動きは予想していたようで、即座に反応して後ろを振り返った斧ゴブリンに再びあっさりとぶっ飛ばされた。短剣が嫌な音を立てた。次はおそらく防げない。だがこれでいい。これで斧ゴブリンはオレを完全には無視出来なくなった。


 護衛かオレか、斧ゴブリンがどちらを優先するか迷っているうちに、その時は来た。護衛に斬り殺された槍ゴブリンが耳障りな声で断末魔を上げると、その場で膝から崩れ落ちて倒れ伏せ、地面に赤い染みを広げていった。


 ほぼ同時に、弓ゴブリンが隠れている茂みの方から首を絞められた鶏のような悲鳴が聞こえ、その直後にアンヌが左肩に矢が突き刺さったまま茂みから飛び出し、こちらに向かって全力で駆け寄ってきた。


 斧ゴブリンはそれを見て観念したのか、武器を捨てて黙ってその場に座り込んだ。護衛は何も言わずにゆっくりと斧ゴブリンのそばまで歩いて立ち止まり、息を吸いながら剣を振り上げた。そして、一瞬の間をおいてかっと目を見開き、稲妻の如く剣を振り下ろすと、僅かに遅れて斧ゴブリンの首が熟れ過ぎた木の実のように地面に落ちた。


次回は10月30日に公開予定です。

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― 新着の感想 ―
Xの企画で、7話まで拝読させていただきました。 どんな世界観なのか、誰が何をしているのか…言動の主体が誰なのかがはっきり伝わる、読みやすい文章です。工夫の跡が感じられますね。 ただ、戦闘パートが薄味…
7話まで読ませて頂きました。 王道のVRゲームですね。名前は思い出せないが、父親の名前を憶えていたり、存在していない(?)記憶があったりと、主人公に記憶のギャップがあり、先の展開に絡んできそうでいいで…
[良い点] 戦闘描写が濃厚で読んでいて楽しかったです。
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