表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
55/143

第55話 ベルンブルク(1)

 ドワーフ鉄鋼騎士団と共に野営地を出発してから半日、ようやく目的地へと辿り着いた。険しい山々に囲まれ、高山特有の冷気に晒されながらも、その都は何十本もの煙突から煙を吐き出し、力強い存在感を示していた。


「着いたぞ。あれこそが我らが故郷、ベルンブルクだ。さあ、さっさと馬車から下りろ。ここからはお前達も歩け。後で取り調べと荷物検査を受けてもらうが、それまでに変な気を起こさないことだ」


 武器が全て没収されているので、言われなくとも抵抗する気はない。というか出来ない。なのに、老齢のドワーフはどうしてここまで、いちいちこちらの気に障る言い方をするのだろうか。他の開拓者達も同じような感想を抱いたらしく、睨み付ける者、舌打ちをする者、とにかく空気が悪いことこの上ない。


 もっとも、ドワーフ鉄鋼騎士団の面々は、オレ達の感情など意に介することなく、ベルンブルクへと続く坂道を下っていく。当然ながら、オレ達はついていくしかないのだが、何せ理由が理由なので、足取りは非常に重かった。


 そのような調子なので結局、全員が都の門をくぐるまで小一時間かかった。都の中では様々な機械兵が、ドワーフ達の生活を支えていた。


 店番や荷物の運搬、さらには土木工事など、活動内容は多岐に渡る。これら非戦闘用の機械兵は、全て機械人形と呼ばれている。キャロラインはそう語った。


 ベルンブルクの特徴はそれだけではない。都のあらゆる機能の多くが、蒸気の力で動いている点だ。大通りの真ん中を蒸気機関車が走り、工場の煙突が煙を吐く度に振動が伝わる。空の大部分が煙で覆われていてよく見えない。


 そして、大通りを三十分ほど歩かされたところで、突然、先頭を歩いていた老齢のドワーフが、一際目立つ建物の前で立ち止まった。石造りの五階建てで窓に鉄格子がある、あまりにも物々しいその建物は、看板に『ベルンブルク中央刑務所』とあった。


「全員、止まれ。お前達はこの建物の中で、一人一人個別で取り調べを受けてもらう。荷物検査も並行して行う。さっきも言ったが、変な気を起こすなよ」


 老齢のドワーフが高圧的にそう言い放つと、オレ達は次々と刑務所の中へと押し込められた。反抗的な態度をとった者もいたが、すぐにドワーフの騎士達に鎮圧された。それを見た他の者達はおとなしく従った。


 取り調べは滞りなく進んだ。しかも、一人あたり平均で十分くらいしかかかっていない。不思議に思ったものの、早めに解放されたのでほっと胸をなでおろした。ただ、キャロラインだけまだ刑務所の中にいる。


 さきほど反抗的な態度をとった者を含めた数人だけ、取り調べの時間が明らかに長いのだ。このことに対して言い知れぬ不安を覚えたが、今は考えても仕方がないので、とにかくまだ泊まれる宿を探すことにした。時刻はすでに、深夜になっていた。


次回は5月5日に公開予定です。

ツイッターもよろしくお願いします!

https://twitter.com/nakamurayuta26


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ