第52話 ビジネス
永遠へ至る鍵。封印を解くべきではなかった存在。マキナは自身のことをそう表現したが、オレ達はいまいち理解し切れずにいると、急に背後から拍手の音が聞こえてきた。驚いて後ろを振り向くと、そこにはニヤニヤと笑うカネキが立っていた。
「いやあ、実に素晴らしい。あの高さから落下して生存していることもそうですが、その上でさらに永遠へ至る鍵の封印を解除するとは、見事としか言いようがありません」
オレとエマニエルはマキナをかばうように前に出た。いつからここにいたのか。どうして気付けなかったのか。様々な疑問が頭の中を駆け巡ったが、何一つ解消されないまま、カネキが勝手に話を進める。
「実は私、今とても重要なビジネスを抱えていまして、そのビジネスにはどうしてもその子が必要なんですよ。発見と封印の解除に対して多額の謝礼を支払いますので、どうかその子を私に譲ってはいただけませんか?」
カネキは言葉遣いこそ丁寧だが、オレ達三人を見る目は悪意に満ちていた。直感が告げる。マキナをカネキに渡してはならない、と。しかし、そうなるとカネキは強硬手段に出るかもしれない。そう思わされるほど今のカネキは、マキナへの強い執着心を見せていた。
だが、マキナに固執するあまり、奴は一つの大きなミスを犯している。それは、どこにつながっているのか分からなかった通路を背に、こちらの方を向いて立っていることだ。あれではオレ達に「後ろの通路は上とつながっています」と、わざわざ教えているようなものだ。
あと一手、奴を出し抜く手があれば、マキナだけでも逃がせられるかもしれない。オレがそう必死に策を練っていると、マキナが急に背後から無言でカネキの前に出た。驚き慌てるオレ達二人と、ニヤリと笑うカネキに挟まれても、彼女は無表情のままだ。
「私の永遠へ至る鍵としての力がお望みでしたら、権限開放のための専用カードキーが必要となります。もし今持っておられないのでしたら、申し訳ございませんがお応え出来ません」
マキナが淡々とした口調でそう言って頭を下げると、カネキのニヤニヤ笑いが固まり、血の気がすうっと引いて、みるみる顔色が悪くなっていった。その様子を目にするのは正直なところ痛快であったし、また、こちらにとってはチャンスでもあった。
疑問こそさらに増えたものの、カネキは明らかに動揺して、オレ達二人への警戒がおろそかになっている。やるなら今しかない。オレはエマニエルにハンドサインを送った後、弓使いが苦手とする接近戦へともつれこませるため、ダメージ覚悟で突撃した。
その直後だった。カネキの足元から破裂音が聞こえたかと思うと、あっという間にカネキは白い煙幕に包み込まれた。まさかと思い、オレは通路の方を見た。すると、生意気そうな笑みを浮かべているジャックが、こちらを手招きしながら立っていた。
次回は4月14日に公開予定です。
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