表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
51/142

第51話 永遠へ至る鍵

 エマニエルが床に刻まれた元素魔法語を発見してから、一体どれだけの時間が経過しただろうか。丸い筒のような形の暗黒空間にいると、時間の感覚が分からなくなってくる。上から光が差し込んでくるのは、他の人間がまだ残っているからだろう。


 しかし、どういうことだろうか、助けがくる気配は全くない。オレが不安と焦りを覚え始めた頃、突然、エマニエルが大声で「やった、解けたあ!」と言った。謎めいた元素魔法語による封印が、ようやく解除出来たようだ。彼女の足元が、光を放つ。


 エマニエルはその場からゆっくりと後ろに下がった。すると、床に光の円が描かれ、光の円に囲まれた部分が円盤のようにグルグルと回転しながら、オレの頭よりも上の高さまで浮いて止まった。そして、円盤のようになった床の下には、細長い金属製の箱があった。


 箱の形と大きさはどう見てもまさに棺そのものだった。何もしていないのに、棺の蓋が勝手に動き出し、それを見ていたエマニエルはオレの背後に隠れた。オレも鞘から剣を抜き、二人で白い煙が充満した棺の中を凝視した。すると、棺の中に誰かがいた。


 銀髪の少女だ。明らかにエマニエルよりも幼い。体は触れたら折れてしまいそうなほどに細く、肌は病的なまでに青白い。彼女を初めて目にした時は、てっきり死んでいるものと思ったが、彼女がゆっくりと静かに起き上がったのを見て違うと分かった。


 銀髪の少女が目を開けてこちらの方を見てきた。血のような赤色の瞳には感情の光が宿っておらず、ただ虚ろな闇だけが存在していた。そんな彼女だが、ぼうっとした表情で警戒するオレ達、特にオレの方を見つめていた。


 少女の考えが読めず緊張していると、フラフラと歩いてこちらの方に近付いてきた。銀色の長い髪が一歩歩くたびにゆらゆらと揺れる。やがて彼女はオレ達のすぐ目の前で立ち止まり、しばしの沈黙の後、開口一番にこんなことを口にした。


「お腹が空きました。エネルギーの補給、すなわち食事を希望します」


 透き通るような繊細で美しい声。しかし、抑揚の乏しい淡々とした話し方は、オレ達をただひたすら困惑させた。「ええと。こういうのならあるけど、食べる?」と、エマニエルがおずおずと携帯食を差し出すと、少女はちょっとの間だけそれを不思議そうに見た後、すぐに手に取って口の中に入れた。


 夢中になって携帯食を食べる姿は、同じ年頃の女の子とあまり変わらない。しかし、だからこそ疑問に思うのだ。なぜ少女は、地下工場の奥の奥であるこの場所で、厳重に封印されていたのか。オレは思い切ってこのことについて聞いてみた。すると、意外なほどあっさりと少女は答えた。


「私が危険な存在だからです。私はこの世に唯一残された、永遠へ至る鍵。私の名前はマキナ。貴方がたは、私の封印を解くべきではなかった」


次回は4月7日に公開予定です。

ツイッターもよろしくお願いします!

https://twitter.com/nakamurayuta26


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ