第49話 ガーディアン(3)
「みんな、相手の弱点は首よ。でも、魔法攻撃は効かないかもしれないから、そこだけは注意して!」「首だ、首を狙え。奴は明らかに首への攻撃を嫌がっている。前衛組は急いで隊列を組み直して、奴を足止めするんだ!」
オレとキャロラインはほぼ同時にそう叫ぶと、それぞれ行動を開始した。キャロラインは後衛組にもっと左右に広がって、多角的に攻撃するように指示した。弱点を守らせ続けることで、接近と反撃を許さないつもりなのだろう。
一方でオレはというと、我ながら大胆にも、『ガーディアン』の正面に立って、オレ一人に注意を引きつけようとしていた。理由は、前衛組が立て直す時間を稼ぐことと、万が一にも後衛組に接近することがないようにするためだ。
防戦一方の状況を打開しようと、『ガーディアン』がオレを狙って強引に剣を振り上げた。その時、一本の矢が奴の首に命中した。だが、矢は傷一つつけることも出来ず、装甲に弾かれて床に落ちた。
いくら弱点とはいっても、さすがに一本の矢でどうにかなるわけではないようだ。オレがそう考えていると、『ガーディアン』がさっきの矢を放った弓使いの方に視線を向け、両目の赤色の光を強くした。すると、奴の頭部の周囲に赤色の文字が、光の輪っかになって出現した。
次の瞬間、炎の弾丸が弓使いに対して放たれた。弓使いはギリギリで回避に成功したが、オレは焼け焦げた床を見ながら動揺していた。ここまできて新たな攻撃パターンだと。どうする。どう対応すれば良い?
必死に考えを巡らせている間に、『ガーディアン』は次の炎の弾丸を放とうとした。しかし、オレの背後から飛んできた冷気の矢が、炎の弾丸を発射直前に消滅させたのだ。驚いて背後を見ると、そこにはエマニエルと他にも数人の魔法使いがいた。
「援護します。ヒロアキさん、やっちゃって下さい!」
自信と気合いに満ちたエマニエルの笑顔と言葉に、オレは背中を押され、思い切って盾を投げ捨てて駆け出した。『ガーディアン』は三発目の炎の弾丸を生成するが、再び冷気の矢によって消された。包囲網を崩すために動こうとしても、態勢を立て直した前衛組に動きを封じられる。
駆け出したオレの体を今度は緑色の光が包み込んだ。体が軽い。届く。オレはジャンプした。五輪金メダリストも真っ青なハイジャンプだ。経験したことのない浮遊感の中で、オレは奴の弱点である首へ『疾風突き』を発動した。
その瞬間、世界の全てがスローモーションになった。『ガーディアン』と目が合った。無機質な目の光が、恐怖で揺らいだような気がした。それでも関係なく、オレの剣は無情にも、首の装甲の隙間に入り込んだ。一本の細い糸を切ったような感触が、剣先から伝わってきた。命を断つ感触だと、本能で理解した。
次回は3月24日に公開予定です。
ツイッターもよろしくお願いします!
https://twitter.com/nakamurayuta26




