第46話 開かずの扉
地下工場の攻略も残すは最下層のみとなり、大詰めを迎えていた。ここまでお宝らしいお宝が一つも見つからず、それどころか、機械兵の相手ばかりをしていたので、攻略チームの空気は最悪だった。
「遺跡の攻略はハイリスク・ハイリターン。開拓者の常識だけど、ここまでリターンがないとはねえ。さすがにヤバイよ、コレ。今ついて来ているのは、ほとんどお宝目当てだからね」
オレの隣を歩くアンヌは表情に焦りを見せていた。このままお宝が見つからないと、地下工場の攻略を主導したキャロラインに、難癖をつける者が出る可能性がある。オレも胃が痛くなってきた。
オレ達はさらに奥へ奥へと突き進んでいった。すると、固く閉ざされた扉の前に辿り着いた。とにかく大きい。縦の大きさは十メートル以上はありそうだ。横幅も五メートル以上はある。
「すごい。あの扉に描かれている紋様は全部、元素魔法語ですよ。ここまで高度で複雑な元素魔法、私、見たことも聞いたこともありません。これは間違いなくすごい発見になりますよ!」
興奮気味なエマニエルの言葉を聞いて、オレは心から驚いた。彼女が言うその紋様は、扉の隅々にまで描かれているからだ。彼女の言葉通りならば、確かにこれは歴史的な発見なのかもしれない。
意味深な紋様が描かれた、巨大な開かずの扉。最後の最後になってようやく、お宝の気配を感じさせるものが出てきた。攻略チームの士気が急上昇していくのが、ひしひしと伝わってくる。
「やっぱりな。普通の鍵開けじゃどうしようもねえ。無理に開けようとすりや、何が起こるか分からねえ。というわけで、エマニエル、お前ら魔法使いの出番だ。後はよろしく頼むぜえ」
ジャックは開かずの扉に近付き、一目見てすぐに降参のポーズをとった。すると、ジャックと入れ替わってエマニエルが、それから攻略チームの魔法使い達が、次から次へと開かずの扉に近付き、嬉々としながら調べ始めた。
彼ら彼女らは、右へ左へ歩き回っては、時々立ち止まって何かの呪文を口にしていた。オレはその光景を興味深く観察していたが、しばらくすると開かずの扉に変化があった。扉の紋様が徐々に光を放つようになり、やがて地響きと共に、開かずの扉がゆっくりと開いたのだ。
しかし、喜びも束の間。扉の先の広い地下空間の中央に、身の丈三メートルほどの人型の機械兵が、剣と盾を手に銅像のように鎮座していたのだ。胸部装甲に何か文字が書かれている。元素魔法語で、『ガーディアン』という意味らしい。エマニエルがそう教えてくれた。
次回は3月3日に公開予定です。
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