第45話 上の人間
全くもって想定外の出費のすぐ後に、地下工場の攻略は再開された。ただし、再開後は余計なおまけがついてきた。想定外の出費の原因となったカネキ達が、地下工場の攻略に同行すると言って、勝手にオレ達についてきたのだ。
「頼んでもいないのに、勝手についてきてくれるのね。それとも、他に何か目的があるのかしら。言っておくけど、お宝は早い者勝ちなのを忘れないでね?」
「もちろん、そのことは私共も重々承知しておりますとも。そもそもこの遺跡には、ビジネスをしに来たにすぎませんから。もっとも、お宝を手に入れられたら嬉しいことに変わりはありませんが」
キャロラインとカネキは二人並んで、攻略チームの後ろの方で、笑いながらそんな会話をしていた。しかし、二人の周囲には緊張した空気が漂っていた。口数は少なく、足取りも重い。
士気は明らかに下がってしまっている。だが、遺跡の先住民にとってはそんなものは関係ない。カチカチ。ガシャンガシャン。オレは心臓が跳ね上がるのを感じると同時に、すぐさま剣と盾を構えた。
正面の暗闇に警戒しつつ、オレはそっとカネキの様子をうかがった。すると、彼はいつの間にか弓矢を手にしていた。部下に持たせていたのか、それとも彼自身が隠し持っていたのか。目を離したのはほんの数秒だったので、何とも不思議だった。
そして、敵の集団が暗闇から姿を見せた。カマキリ型とクモ型。前回の戦いと同じ組み合わせの機械兵が、隊列を組んでこちらにやって来る。興奮と恐怖が、体と呼吸を震わせる。機械兵の目の光が赤色に変わった。戦闘開始の合図だ。
カマキリ型が切り込み、クモ型が援護する。前と同じ展開だ。クモ型が放った光弾が左腕をしびれさせ、カマキリ型が鎌付きの両腕を同時に振り下ろす。これも前と同じ展開だ。しかし、ここからは違う。
カマキリ型が両腕を振り上げる直前に、あえてオレは懐に飛び込むように『疾風突き』を発動した。両腕振り下ろし攻撃でなければ、オレはこの時点で死んでいただろう。だが、オレにはそうはならない確信があった。
前回の戦いの途中から、開拓者達の戦い方を観察して気付いたことがある。それは、カマキリ型は真っすぐ急接近した後、必ず両腕振り下ろし攻撃をすることだ。開拓者達はこの隙を突いていた。
わずかな装甲の隙間にオレの剣が吸い込まれた直後、カマキリ型の目の光が消え、両腕の鎌が空を切って地面に突き刺さってからは、動きも完全に停止した。手に残った感触が、オレに自信を与えてくれる。
だが、そんな自信もすぐに吹き飛んだ。別の場所でカマキリ型がほぼ同時に三体倒れた。装甲の隙間に矢が刺さっている。オレが後ろを振り向くと、直後にカネキが矢を三連射した。少し強くなっても、上の人間とはまだ大きな差があることを、いやでも実感させられた。
次回は2月25日に公開予定です。
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