第43話 ブルク・ダム遺跡(6)
たとえ気持ちに整理がつかずとも、無情にも時は過ぎ去る。結局、キャロラインの問いにオレは何も答えられず、昨夜の二人きりでの秘密の会話は打ち切られ、そのまま次の朝を迎えた。
オレは今、謎の地下工場があるという、工業エリアの例の廃工場にいた。廃工場の内部は一寸先も分からぬほどに暗く、床には錆だらけの機械部品が散乱していて歩きにくい。
「これよ。このスイッチを押すと、地下工場への隠し階段が姿を現すわ。みんな、ここから先はどんな危険があるか分からないから、慎重になって進んでちょうだい。少しでも違和感があったら、すぐに周りの人に言うこと。良いわね?」
キャロラインがそう念を押すと、地下工場の攻略に参加した開拓者達は、全員が驚くほど素直に頷いた。昨日の作戦の時もそうだったが、彼女のずば抜けた統率力は、一体どこからきているのだろうか。
考えている間に隠し階段が姿を現し、地下工場の攻略が始まった。攻略チームはジャックのような、探知能力が優れた者達を先頭にして、ゆっくりとではあるが、順調に地下工場を攻略していった。
どこまでも深い暗闇の中、頼りない松明や魔法の明かりを頼りに進んでいると、突然、先頭の何人かが無言でハンドサインを出した。それを見た後続の面々はピリッとした空気を放ち、各々がそれぞれの武器を構えた。
オレも自分の心臓が暴れたりしないよう、深呼吸をしながら前方を注視した。すると、やがて暗闇から規則正しい音が聞こえてきた。カチカチ。ガシャンガシャン。音は確実にこちらの方に近付いてきている。
そして、暗闇から最初に出てきたのは、四体のカマキリ型の機械兵だった。カマキリ型は四本の足を素早く器用に動かし、攻略チームの先頭にいる者達に襲いかかった。逃げ遅れた不運な者達は、次々とカマキリ型の鎌の餌食になった。
カマキリ型に続いて今度は、胴体が立方体になっているクモ型の機械兵が、胴体に付いている短い円筒の先をこちらに向け、赤い光弾を撃ってきた。一発の光弾がオレに飛んできたので、慌てて盾を構えて防いだ。
次の瞬間、強烈な衝撃が左腕を襲った。大怪我こそしなかったが、左腕がしびれてまともに動かせなくなってしまった。さらに、一体のカマキリ型がものすごい速さでオレとの距離を詰め、両腕の鎌を振り上げて斬りかかってきた。
オレは左腕の鎌を剣で、右腕の鎌を盾で受け止めようとした。だが、しびれが残っている左腕では受け止め切れず、そのまま強引に右腕の鎌に首を浅く斬られた。焼かれるような鋭い痛みと共に、オレの意識はブラックアウトした。
次回は2月11日に公開予定です。
ツイッターもよろしくお願いします!
https://twitter.com/nakamurayuta26




