第41話 ブルク・ダム遺跡(4)
時刻が正午になった頃、キャロラインの作戦が始動した。作戦といっても極めて単純なものだが、言い出しっぺなのもあって、一番危険な役割を、オレ達『暁の至宝』が引き受けることになった。
そして、オレ達は今、例の廃工場の周辺にいる魔物達に、物陰から奇襲をしかけようとしていた。合図はキャロラインの狙撃だ。そうして気配を殺して、魔物の群れの様子をうかがっていたところ、とあるオークの動きに変化があった。
群れにいるオークの中でも、そいつは一際目立つ存在で、頭に立派な兜をかぶっていた。そいつは突然、こちらには理解不能な言葉を使い、大声で群れの魔物達に、どうやら何かを命令したようだった。
群れの魔物達は命令に従い、こちらの方に背を向けて、廃工場の中へ侵入しようとした。その時、立派な兜のオークの首に、一本の矢が突き刺さった。誰の何の矢かは考えるまでもない。キャロラインの合図の矢だ。
オレは剣と盾をしっかりと握り締め、物陰から覚悟を決めて飛び出した。狙うは狙撃をまともにくらって死んだオークを見て、呆然と無防備に立っている斧ゴブリンだ。偶然、オレの一番近くにいただけの不運なそいつに、『疾風突き』を発動した。
肉を切り裂き、命を断つ感触がした。剣を引き抜くと傷口から鮮血が噴き出し、濃厚な血の匂いが嗅覚を刺激する。他にもいくつかの悲鳴や断末魔などが聞こえた。どうやら奇襲は成功したようだ。
当然ながらこんなことをされれば、誰であろうと怒り狂う。それは魔物も同じことで、奇襲が成功してすぐに逃げ始めたオレ達を、怒声を上げながら追いかけてきた。一見するとピンチだが、これもまた作戦の内だ。ここまでは順調だった。
しかし、あともう少しで、作戦の最終段階というところで、エマニエルが石につまずいて転んでしまった。その姿を目にしたオレは、体が反射的に動いてエマニエルを守ろうとしていた。この動き自体は問題ない。オレはチームの盾なのだから。
ただ、敵の攻撃を盾で受け止めた後、エマニエルを逃がすことを優先しすぎて、足を止めてしまったオレは、後から続々と追いついてきた魔物達に、今にも包囲されそうになっていた。明らかなオレの判断ミスだった。
激しさを増していく敵の攻撃に対応が出来ているのは、新スキル『盾の心得』の効果によって、盾を使う時の動きが最適化されているからだ。だが、限界は近い。オレは死を覚悟した。何者かが魔物達を攻撃したのはその時だった。
何者かの攻撃に驚いた魔物達の視線の先には、隊列を組んだ機械兵達がいた。この状況こそが、作戦の真の狙いだった。そして、機械兵の巡回ルートに誘導された魔物達は、こちらの思惑通り、機械兵達と潰し合いの戦いをすることとなってしまった。
次回は1月21日に公開予定です。
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