第40話 ブルク・ダム遺跡(3)
翌朝、オレ達『暁の至宝』は、他の開拓者チームと共に、元公園の荒地に集合していた。知っている顔も知らない顔もいるが、そのどれもが暗く沈んでいたり、あるいは困惑や不安などを隠せないでいた。大怪我を負っている者さえちらほら見かけた。
「開拓者のみんな、おはよう。良いお知らせと悪いお知らせがあるわ。まずは良いお知らせだけど、ブルク・ダム遺跡の全体像を把握したわ。全ては調査隊の報告書と、先に到着していた開拓者のみんなの協力があってこそね。結果、工業エリア内のとある廃工場の地下に、秘密の工場が存在していることが判明したわ」
キャロラインの壇上からの言葉によって、開拓者達の間に漂っていた暗い雰囲気を、期待の感情がこもったざわめきが吹き飛ばした。ここまでこれといった成果を上げられていない中で、ようやく明るい兆しが見えたのだ。無理もない反応だ。
「悪いお知らせは、開拓者側の動きを察知して、遺跡の周辺で待ち伏せしていた魔物の群れの残党が、その廃工場の周りに集まってきていることよ。奴らの目的は不明だけど、厄介なことになりつつあるわ。おまけに、工業エリア内の機械兵の動きが活発になっている」
キャロラインからの悪い知らせは、せっかく明るく盛り上がっていた雰囲気を、再び元の暗くて沈んだ重いものに戻してしまった。これもまた無理もない反応だ。群れの残党であるゴブリンとオークに加え、遺跡の機械兵までをも相手にするほどの、余裕はもう残っていないからだ。
「キャロラインさん、大丈夫かな。事前に説明されていても、やっぱり不安です」
「本人が大丈夫って言ってたんだから、大丈夫だろ。あの人が無責任なことを言う人じゃねえのは、お前だって知ってるだろ。とにかくここは、あの人を信じようぜ」
壇上のキャロラインを見ながらひそひそと、心配そうなエマニエルと呑気なジャックがそう話しているのを聞いて、オレはあることを思い出していた。それは、オレよりもずっと先に『暁の至宝』に加入していた、オレの先輩にあたる開拓者達のことだ。
キャロラインが一人だけでチームを結成し、その直後にチームに加入した彼ら彼女らは、チーム結成から今日までの一年と少しの間に、『暁の至宝』を有名な開拓者チームにしたのだ。そんな頼れる彼ら彼女らだが、残念ながら、手が離せない用事があるとのことで今は不在だ。オレもまだ会ったことがない。
「私に一つ策があるの。上手くいけば廃工場の周辺の敵を、こっちの消耗を最小限に抑えつつ片付けられるわ。どうかしら。私の策にのってみる気はない?」
キャロラインが壇上でそう言うと、それを聞いた開拓者達は、俯いて黙り込む者もいれば、逆にひそひそと話し合いを始める者もいた。
次回は1月14日に公開予定です。
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