第39話 ブルク・ダム遺跡(2)
ブルク・ダム遺跡に到着するまでに、オレ達は三度も魔物の群れと交戦した。交戦したどの魔物の群れも、手にしている武器に血がべっとりと付いていた。この辺りで待ち伏せしていた奴らに、遺跡を攻略しにきた開拓者が殺されたのだろうと、キャロラインは言った。
実際にここまで来る道中、奴らに殺されたと思われる開拓者の遺体が、悲惨な姿で何人も見つかった。その度にエマニエルが魔法の力で、犠牲者の遺体を灰になるまで焼いた。全ては不死族に、魂を連れ去られないようにするためだった。
「はあ、やっと着いたか。クソッタレ、ギルドの調査隊は昼寝でもしてたんじゃねえのか。魔物だらけじゃねえか。報告書の内容と状況がまるで違うぞ。どうしてこんなに魔物が多いんだよ。おかしいだろうがこんなの。これからどうしろってんだよ!」
「ぐちゃぐちゃ文句ばっか言ってないで、もっと手を動かしなさいよ。これからどうするかは、キャロラインさんが決めることよ。でも、ヒロアキとエマニエルはしっかり休むんだよ。今日は二人にとって辛い一日だったからね。夕食の時間になったら呼ぶから、それまでゆっくりしな」
アンヌとジャックはさっきから何度も言い争い、キャロラインは周辺の地図を見ながら、険しい表情でずっと考え込んでいた。それに対してオレとエマニエルは、ようやく落ち着ける時間がきたので、野営の準備が行われている場所からそっと離れた。
そして、かつて公園だったと思われる荒地に辿り着くと、そこに座ってゆっくり休むことにした。噴水や花壇の残骸が無惨に散らばっていて、草花がほとんど育っていない光景は、見る者に荒涼とした印象を与えていた。隣りに座っているエマニエルと一緒に、しばらくの間、何も言わずにその光景を眺めていた。
「ヒロアキさん。私、大丈夫ですよ。開拓者に、ううん、それよりも前に魔法使いになった時に、魔法使いの師匠から、ああいうことをしないといけない日がくるって、言われてましたから。今までは出来なかったけど、ヒロアキさんがみんなを守る姿を見て、私も頑張ろうって思えたから出来たんです」
エマニエルは少しぎこちない笑顔を作ってそう言った。体育座りで両膝を抱く彼女の手は、かすかに震えていた。オレはチームの盾として当たり前のことをしただけだよ。そう言おうと思ったが、私も魔法使いとしての責務を果たしただけです、などと言い返されそうだったので、結局、黙っていることにした。
そして、夕方遅くの肌寒さを感じ始める時間帯になった頃、アンヌとジャックが笑顔で、野営と夕食の準備が出来たことを伝えにきた。二人の様子を見るに、どうやら冷静になって仲直り出来たようだ。オレは内心でほっとしながら、エマニエルと共にチームの野営場所まで戻っていった。
次回は1月7日に公開予定です。
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