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第29話 星の円卓

「勘違いなんてするわけないでしょ。死んだ二人には悪いけど、そうするしかないだろうね。重い遺体をちんたら運んでいたら、アンカラッドに着く前に確実に、死者の魂を探している不死族の連中に見つかる。そして、暗黒の門が現れて不死族の連中が襲ってきたら、強いアンタならともかく、私達はどうしようもないからね」


 アンヌはそう言いながらも複雑そうな表情で、炎に包まれ灰となっていく二人の哀れな犠牲者を見ていた。その光景を目にしていると、オレも自分の胸の内が焼け爛れていくのを感じた。


 その間も火の勢いが衰える気配がなかったため、オレは段々と謎の液体の正体が分かってきた。謎の液体の正体は、魔法の力が付与された特別な道具だったのだろう。主な用途はおそらく、さきほど少女がしたような遺体の処理といったところだろう。


「さて、と。みんなの怪我の治療が終わったし、遺体の処理も終わった。そろそろ教えてもらうよ。西の開拓前線にいるはずのアンタが、どうしてこんな所にいるのかを、ね。『星の円卓』のチームメンバー、蠍座のツバキさん?」


「別に、難しいことでも、隠さないといけないことでも、ない。西の開拓前線で、一部のチームが防衛に失敗して、数は少ないけど、蛮族の戦士が、人間の支配圏に侵入した。私は侵入した蛮族を追って討伐している、だけ。それより、そっちのギルドには、この情報がまだ、届いていないの?」


 ツバキと呼ばれた少女は淡々と答え、そして問う。アンヌは答えない。苦々しい顔をしただけだ。アンヌの反応を見たツバキは、「呆れた。そっちのギルドは本当に、いつまでたっても、対応が遅い」とだけ言って、さっさとその場を去ってしまった。


 その後、オレ達は犠牲となってしまった二人の遺品を回収し、森を出て馬車に乗り、アンカラッドに帰還した。帰りの道中、重苦しい雰囲気の中、誰もが必要最低限の言葉しか発さなかった。オレはまた、何の役にも立たなかった。


 アンカラッドに着いたオレ達は早々にギルドに行くと、アレックスとアンヌが受付のレベッカに鬼のような形相で詰め寄った。レベッカは顔面蒼白になりながらも、詰め寄ってきた二人に対して、何度も必死に謝罪の言葉を口にしては頭を下げた。


「もう謝って済む問題じゃないんだよ。ギルドが依頼の難易度を正確に判定してくれるから、私達は最低限のコストで最大限の利益を得られた。だから、私達はギルドに仲介手数料を支払ってでも、ギルドを通して依頼を受けてきた。でも、この調子が続くようなら、そうもいかなくなってくる」


 それでも、アンヌの怒りは収まりそうにはなかった。そしてそれは、アレックスも同様のようだった。それからしばらくの間、揉めに揉めて、最後はギルドマスターのスティーブンまで出てきた。結局、報酬金に多額の賠償金を上乗せすることで話は終わったようだ。


「今から報酬金を山分けしようと思う。だが、死んだ二人の分は必要ない。二人共、『流れ星の子』だったからな。そうした方が死んだ二人も喜ぶだろう。さあみんな、遠慮せずに受け取ってくれ!」


 アレックスは無理に笑顔を作りながらそう言って、一人一人に大金が入っている袋を渡していった。渡された袋から重みを感じた。お金の重さだけじゃない。奪った魔物の命と、奪われた仲間の命。それら全ての重みが、袋の中に入っていた。


次回は8月27日に公開予定です。

ツイッターもよろしくお願いします!

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