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第22話 開拓者の灯火

 正式な開拓者となったからには、やるべきことはたくさんある。まずは武器と防具、それから様々な道具だ。今のオレの武器は剣ゴブリンの剣だけで、防具は今着ているただの布の服だけ。さらに、道具らしい道具も何一つ持っていない。なので、オレが最初にやるべきことはすぐに決まった。


 幸いなことに今のオレには、ギルドから報酬金や支援金として受け取った、決して少なくはない額のお金がある。これだけのお金があれば、最低限の武器と防具、それから色んな道具を買ったとしても、今日の宿代と食費くらいは残るだろう。


「着いたよ。ここがアンカラッドで一番有名なお店、開拓者なら誰もがお世話になる、『開拓者の灯火』さ。このお店には、開拓者が開拓をする時に必要な道具とかが売られているのさ。ギルドのある町ならこのお店も必ず存在するから、アンタもちゃんと覚えておくんだよ」


 アンヌはそう言うと一人だけ先に店の奥へと進んでいった。ジャックとエマニエルは慌てて彼女の背中を追っていった。そんな中、オレは今の自分の目的すらも忘れて、店内の様々な商品に夢中になっていた。


 ゲームの世界の中でしか見ることが出来ないと思っていた物が、この店にはたくさん存在している。今、オレの目の前に、そして左右に、さらには背後にも、現実の世界の一部として存在している。


「ヒロアキさん。のんびりし過ぎていると、アンヌさんに怒られちゃいますよ。ジャックも先に店の奥に行っちゃいましたし、武器と防具は奥の方で売っていますから、私達も早く奥に行きましょう!」


 アンヌを追っている途中で立ち止まっていたエマニエルは、オレに対して興奮気味にそう言うと、瞳をキラキラと輝かせながら店の奥へと走って行った。


 オレも急いで彼女の背中を追っていくと、彼女の言葉通りに店の奥には、多種多様な武器と防具が売られていた。しかし、商品の値札に書かれている値段を見ていけば、予算内で買える物がほとんどないことにはすぐに気が付いた。


 変だな。武器と防具は転生する前から高かったが、今はその時よりもさらに高い。色んな物を最低限買ったとしても、少しのお金は残るだろうという考えは、残念ながら甘かったようだ。さて、どうしたものか。


「あっ、ずっと前から欲しかった魔法の杖がある。この杖があれば、今よりも上手く魔法が使えるんだけど、やっぱり値段が高いな。どうしよう」


 オレがお金のことで悩んでいると、エマニエルは魔法の杖を買うかどうかで迷っていた。そんなエマニエルに対してジャックは、「どうせいつか買うことになるんだから、買っちまえよ」と、苛立ちを隠そうともせずにそう言った。


 エマニエルは魔法使いなのか。エマニエルの言葉を聞いてオレは少し驚いた。どうしてかというと、魔法のスキルというのは強力ではあるが、使いこなすのが難しいので、転生する前は使うプレイヤーがとても少なかったからだ。


 そういった理由でエマニエルに対して驚いていると、突然、アンヌが大声で店員を呼んだ。すると、店員が何かを抱えてアンヌの目の前まで走り、彼女にその何かを手渡した。よく見てみるとそれは、年季の入ったクロスボウのようだった。アンヌは店員からクロスボウを受け取ると、それをまるで宝物のように、大事に、優しく抱えた。


次回は5月14日に公開予定です。

ツイッターもよろしくお願いします!

https://twitter.com/nakamurayuta26


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― 新着の感想 ―
[良い点] テンポ良く話が進んで、次の話がすぐ読みたくなりますね! 各話の最後のヒキがとても上手で、一気読みしたい… [一言] Xでの企画参加ありがとうございました! また、続きを読ませていただきます…
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