第20話 少年と少女
少しでも信頼出来る開拓者チームに入れてもらう。考えた末に出たいくつかの課題の一つが、意外にもあっさりと解決した。開拓者チームへの加入についてアンヌに相談したら彼女は、自身が所属しているチームにオレが入れるように、そのチームのリーダーを説得すると言ってくれたのだ。
「ありがとう、アンヌ。正直に言うと、どこのどんなチームに入れば良いのか分からなかったから、すごく助かったよ。いや、助けてもらってばかりで本当に申し訳ない」
「なに、これもまた先行投資さ、気にしない、気にしない。それよりも、投資した分はこれから先、しっかり働いて返してもらうから、今のうちに覚悟しておくんだね」
アンヌは陽気に笑いながらそう言った後、入口から一番遠い隅の席に座った。昨日、ギルドに朝早く来た時と同じ席だが、昨日とは違って、すでに見知った顔の人間が二人座っていた。昨日の依頼に協力してくれた少年と少女だ。
「ヒロアキ、こっちこっち。アンタ達、ちょうど良かったわ。私達の新しいチームメンバーになる――かもしれない人を紹介するわ。まあ、昨日も会っているから知っているだろうけれどさ」
アンヌに大声で呼ばれたオレは彼女の隣に座って、「やあ、おはよう。昨日は助けてくれてありがとう」と、少年と少女に挨拶してから、改めて自己紹介をした。すると、ふわふわした亜麻色の髪を腰まで伸ばし、黒縁眼鏡をかけている少女が、眠たそうな垂れ目を、これ以上は無理というほどに見開いた。
「助けてくれたなんて、そんな。むしろ、私――。いえ、やっぱり何でもないです。私の名前はエマニエルです。まだまだ未熟な身なので、またご迷惑をおかけしてしまうかもしれません。でも、精一杯頑張ります。よろしくお願いします!」
少女は申し訳なさそうな、それでいて、思い詰めたような表情になりながらそう言った。昨日のことを気にしているのだろう。結果的に、こうして全員が無事に生き残っているのだから、そこまで彼女が気にする必要はない。むしろ、オレは自身の力不足が原因であると考えているし、そのことが何よりも悔しい。
「ちっ。あのな、そうやっていつまでも落ち込んでいても仕方がないだろうが。仕事のミスは、仕事で挽回するしかないんだよ!」
黒色の短髪、睨んでいるかのような鋭い目つき、黒とグレーの動きやすい服装をした少年が、苛立ちを隠そうともせずにそう言った。すると、アンヌは少年の耳を引っ張り、耳元に顔を近付けながら怒鳴った。
「アンタだってまだ半人前でしょうが。生意気なことを言うんじゃないよ、このお馬鹿。ヒロアキ、この生意気な奴がジャック。見ての通りのクソガキだけど、よろしく!」
次回は4月23日に公開予定です。
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