第19話 新たな開拓者
ギルドマスターの仕事部屋で、スティーブンからのいくつかの形式的な質問に答え、最後に登録用の書類に今の自分の名前を書いた。そして、オレは正式な開拓者となった。
「これで開拓者名簿への登録は完了だ。今この時から、お前は正式な開拓者として扱われる。では、改めて――開拓者ギルドへようこそ。新たな開拓者の誕生を、心から歓迎しよう」
スティーブンはそう言うと笑みを浮かべてオレと握手をした。彼の腕はまるで大樹のようにがっしりとしていて、手は岩のようにごつごつとしていた。どれだけ修行すれば、こんな風になるのだろうか。スティーブンとの握手が終わった後も、彼の手の感触を思い出しながらそんなことを考えていると、彼は真剣な表情に戻って話を再開した。
「昨日の依頼と、それからその他諸々の分の報酬については、後でレベッカから受け取ってもらうとして、だ。今日はとりあえず先に二つだけ注意しておくべきことを言っておこう」
オレはスティーブンの言葉を少しも聞き漏らすまいと、神経を集中させて前のめりになった。すると、スティーブンはそんなオレの姿に驚き、それでも穏やかな笑みを浮かべて、「それほど難しいことではないから、そんなに緊張する必要はないぞ」と、オレに言ってきたので、オレはちょっとリラックスして聞くことにした。
「まずは開拓者チームへの加入についてだな。ほとんどの開拓者は開拓者チームに所属し、依頼を受ける時も、チームメンバーと共に受けることが多い。開拓者の仕事は危険と隣り合わせだからな。人数が多い方が安全だし確実だ」
スティーブンの言葉にオレは頷くしかなかった。一昨日のゴブリン達との戦い、昨日の巨大ブルースライムの不意打ち、どちらも協力してくれたり、あるいは助けてくれたりした人達がいなければ、オレがこうして生き残ることは出来なかっただろう。
「次には、開拓者に今一番気を付けておいて欲しい、ある特殊な石のことについてだ。その石は虹色に輝く美しい宝石のようなものなんだが、厄介なことにそいつは、素手で触れた者を発狂させる性質がある。もし見つけた場合は近付こうとはせず、開拓者ギルドに報告してくれ」
以上だ。スティーブンはそう言って話を締めくくった。その後、ギルドマスターの仕事部屋を出たオレは、これから開拓者として、具体的にどのような活動をしていくのかを考えようとした。
だが、まずは一度死にかけて走馬灯まで見てしまったからには、ここがゲームではなく現実の世界であるという、頭では理解していても、心の中では目を背けていた事実を、今度こそしっかりと受け入れなければならなかった。
次回は4月9日に公開予定です。
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