表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/143

第15話 ギルドマスター(2)

「よし、これで転生者名簿への登録は完了だ。これからはこの町はもちろん、他の開拓者ギルドがある町でも、お前は正式に一般人として扱われ、ギルドから支援金が入ってくるようになる」


 スティーブンがそう言って分厚い書類の束を机の引き出しの中に入れるのを見て、オレはこれで必要な手続きは全て終わったと思って安心したのだが、すぐに別の分厚い書類の束が引き出しの中から出てくるのを目にして、オレはうんざりした気分になった。オレのそんな反応を見たスティーブンは苦笑いを浮かべた。


「本当にすまんな。これが今日の最後の説明と質問になるから、よく聞いて考えて答えてくれ。実は転生者名簿の他にも、開拓者名簿というものがあってだな。転生者が開拓者として正式に活動するためには、必ずこれに自分のことを登録しなければならないというルールがある。つまり、俺が何を言いたいのかというと――」


 スティーブンは一度そこで言葉を切った。そして、手にしている分厚い書類の束に目を落とした後、何かを決心したかのような表情で小さく頷いた。彼は再び顔を上げて、真っ直ぐオレの目を見ながらこう話を切り出した。


「開拓者になってみる気はないか。予め言っておくが、転生者名簿とは違って、開拓者名簿への登録は本人の自由だ。もちろん、開拓者として活動していくことは非常に危険であり、常に死を覚悟しなければならない。だが一方で、未開拓地での開拓や町の防衛などで貢献した場合、貢献した者に対して莫大な報奨金が支払われる」


 オレはスティーブンの言葉を聞きながら、自分のこれからのことについて考えようとした。だが、色々な考えがまるで水の泡のように、意識の水面に浮かんでは弾けて消えていく。どうしてだろうと戸惑っていると、スティーブンが黙って静かにオレの答えを待っていることに気が付いた。


「すみません。開拓者名簿への登録については、今ここですぐに答えを出すことは出来そうにありません。もう少しだけ考える時間が欲しいです。昨日から色々とあったせいか、さっきから頭の中で考えが全然まとまらないんです」


 オレの答えを聞いたスティーブンは、「そうか、分かった」とだけ言って、引き出しの中からさらに別の書類の束を出した。しかし、今までスティーブンがオレに見せてきたものの中で、それは一番枚数が少ないように見えた。


「これは開拓者名簿に仮登録するためのものだ。自分に開拓者としての適性があるのか不安な者が、仮登録をして簡単な依頼を受け、その後に正式な開拓者になるかどうかを決める。これはそのためのものだ」


 スティーブンはそう言ってオレに仮登録のための書類を手渡した。オレはスティーブンから受け取ったその書類をしばらく見つめ、そして、その書類に今の自分の名前を書いた。これで、仮登録は完了した。どうして仮登録したのかというと、まだ考えをまとめることが出来ない頭でも、このままだとじり貧になることだけは理解出来たからだ。


次回は2月19日に公開予定です。

ツイッターもよろしくお願いします!

https://twitter.com/nakamurayuta26


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] ここまで読みました。評価もさせていただきました。 前作もそうでしたが、Nakamuraさんとは趣味が合う気がするんですよね。私も次はVRゲームかなーと思っていたので。 やはり圧巻の描写力…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ