第142話 円卓親衛隊
「マキナはオレと、キャロラインさんのところに。他はハーフエルフ達の避難!」
状況が急激に動き出したのと同時に、オレは仲間達に指示を出した。乱戦になった後では、割り込む隙がないからだ。しかし、地面から岩の壁がせり上がり、親衛隊の行く手を阻んだ。
「ふん、青二才共が。そんなちんたらした動きで、この私をどうにか出来ると思ったのなら、随分とおめでたい奴らだ」
バルバラは嘲笑しながらそう言った。その言葉に親衛隊は躍起になって、岩の壁を破壊しようとしたがびくともしない。中には壁と壁の隙間を抜けようとした者もいたが、ことごとくキャロラインのクロスボウの餌食となった。
オレとマキナは転げそうな程大急ぎで大きく迂回して、キャロラインの矢が三人目をしとめた時、ようやくツバキの前に躍り出た。親衛隊も四人目五人目の犠牲者を出しながら、強引にこちらに迫り来る。
突出した二人の内一人をオレが、もう一人をマキナが抑え、後続は全てツバキが抑える形になった。図らずも包囲される形となった親衛隊員AとBは、活路を開こうと死に物狂いで剣を振るい始めた。
守りを固めろ、焦りを誘え。攻撃に意識を集中させて、防御への意識を疎かにさせるんだ。激しくなる攻勢の中、細かな裂傷が増え続けても必死に耐え、そして――足を滑らせるふりをした。
それを好機と見た親衛隊員Aは、剣を大きく振り上げる独特のモーションをとった。『落雷斬り』の予備動作だ。オレは『疾風突き』を発動し、無防備になった相手の胸元を貫いた。
相手より技の出が早いことが、勝利の決め手となった。親衛隊員Aは口から血を吐きながら、剣を地面に落として地に伏せた。Bもマキナの斧に剣を折られ、直後に頭をかち割られて絶命した。
ツバキはというと、全く問題なかった。親衛隊の剣という剣を次から次へと、避け、防ぎ、弾き、そして命を狩っていく。流麗かつ効率的にだ。以前、彼女から強くなったと賞賛されたが、差は縮まっていないような気がした。
「攻撃を止めろ、私の命令を聞け。オードリー、勝手に親衛隊を動かしたあげく、損害まで出すとは、貴様は後で厳罰に処す、覚悟しておけ!」
「うるさい、うるさい、うるさい。私は世界一カワイイ女の子じゃないとダメなの。そもそも、お前が計画の遅れは許さないとか言うから、こうなったんだろうが!」
戦死者が十人を超えた頃、アーサーとオードリーは勝手に仲間割れを始めた。親衛隊は驚き戸惑い、攻撃を止めて後退していく。それに合わせるかのように、岩の壁が全て地中に沈んだ。
「おっと、ここで暴れようなんて思うんじゃないよ。これ以上やるつもりなら――私も相応の対応を取らせてもらうよ」
バルバラが圧を込めた笑みでそう牽制すると、アーサーとオードリーのヘイトが一斉に彼女の方に向いた。思わず一歩引いてしまうほどの強大なプレッシャーが、周囲にいる全員を襲った。
次回は11月9日に公開予定です。
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