第141話 円卓の主
ハーフエルフ達と『円卓親衛隊』、両者の衝突は不可避かと思われたその時、一人の少女が現れた。少女が一歩進む度に、場の空気が変わっていき、彼女に視線が集まっていく。やがて、少女――マリアンは両者の間に立ち止まった。
「『星の円卓』の主、アーサーよ。お前が探しているマリアンはここにいるわ。今すぐに剣を収めなさい。今のお前が何をしようと、私を思い通りにすることは出来ないわ!」
マリアンはアーサーに面と向かってそう言い放つと、アーサーは整った顔立ちを一瞬だけ不快そうに歪めたが、すぐに不敵な笑みへと戻った。
「ほう、このアーサーに反抗する気か。それは得策ではないぞ。何故なら、『暁の至宝』のリーダー、キャロラインの身柄は我々の手にあるのだからな!」
アーサーの発言にオレは殴られたような衝撃を受けた。キャロラインが『星の円卓』に拘束された。その事実をすぐには受け入れられず、オレは激しく動揺してしまった。その間も状況は容赦なく進んでいく。
「さあ、もう一度だけ機会をやろう。今すぐ魔女マリアンを差し出せ。さもなくば、お前達を皆殺しにし、キャロラインを処刑する!」
ハーフエルフ達と仲間達にも動揺が広がる。しかし、マリアンだけは落ち着きのある堂々とした態度のままだった。その場の誰よりも貧相でありながら、誰よりも強い意志を宿している。
「私はお前に屈する気はない。そして、さっきも言ったけれど、何をしようと今のお前には、私をどうすることも出来ないわ!」
どう考えても容易にはいかない状況なのに、どうしてマリアンはああも堂々としていられるのだろう。特別な力で何か有利なことを感じ取っているのか。そう戸惑っていると、遠くから誰かが走ってくる音が聞こえてきた。
「間に合って、良かった。久し振りね、アーサー。それと、オードリーも。相変わらず、好き勝手にやっているわね。そこは私も、人のことは言えないけど」
声の主はツバキだった。彼女は駆け付けてくるなり、アーサー達の背後に現れた。それも、キャロラインとバルバラを連れてだ。これにはさすがに予想外だったのか、アーサーも嘲笑から驚愕に表情を変えた。
「貴様、どこにいるのかと思っていたら、まさかここにきて裏切るとはな。この代償は高くつくぞ」
「裏切るもなにも、信頼関係なんて、最初からなかったじゃない。代償だって、もうとっくに覚悟の上よ」
徐々に怒りをあらわにするアーサーに対し、ツバキは失笑とも自嘲ともとれる複雑な笑みを浮かべた。マリアンはこうなるのを感じ取っていたのか。『円卓親衛隊』は騒然とし、浮足立っている。
「ふざけたこと言ってんじゃねーぞ、このアバズレが。おい、『円卓親衛隊』。あのクソ女をぶち殺せ。さっさとしねーと、お前らをぶち殺すぞ!」
混沌とした状況の中、オードリーが唐突にヒステリックになって、杖の先端を親衛隊に向けて脅した。親衛隊は恐怖に駆られ、方向転換してツバキの方へと殺到した。アーサーの制止も意味をなさず、状況は激しく動いていく。
次回は11月2日に公開予定です。
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