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第134話 未来を示せ

 ハーフエルフの隠れ家に戻ってオレ達がまずしたことは、ハーフエルフ達を呼び集めて、自分達の作戦の概要を改めて説明することだった。当然、作戦への不安は誰しもが抱くだろう。


「言いたいことは分かった。でも、本当に上手くいくのか。そもそも、この作戦自体、もうばれているんじゃないか?」


 勝負所はここだな。ハーフエルフの青年が不安を口にするのを、オレは相槌を打ちながら聞いてそう思った。大丈夫だ、準備はしている。マリアンの方をちらりと見ると、彼女もこっそり頷いた。


「作戦についてはまだばれてはいない。念のためにオレ達の仲間が周りを見張っているし、何よりも彼女が、天地は我らの味方である、そう示している」


「この方の言う通りです。天は我らを助け、地は我らに助けを求めています。今こそ立ち上がる時です。黄金の森を覆う黒い影を払い除け、新たな未来を掴み取るのです!」


 オレの言葉に続き、マリアンが一歩前に出て声を張り上げた。初対面のおどおどした姿と、今日のぼんやりした姿が印象に残っていたからか、あまりに堂々とした姿にオレは少し驚いて目を見開いた。


「そして、今ここで立ち上がらなかったら、次に同じような好機がいつ来るのか。二度と来ないことだってありえます。もしそうなったら、私達の子孫にどう顔向けするのですか!?」


 ハーフエルフ達ははっとした表情になった。彼らの心が揺れ動いているのが手に取るように分かる。マリアンの影響力はオレの想像の遥か上をいっている。まさか、ここまでスムーズにいくとは。


 あともう一押しでいける。そのもう一押しも用意している。オレが合図を送ると、木陰から一組の老夫婦が姿を見せた。オレに同情して調査の協力をしてくれた老人と、そのご婦人だ。


「この方達は、差別問題の解決に協力すると、自ら申し出てくれました。見ての通り純血のエルフだけれど、その意志に嘘偽りはないことを、この私が保証します!」


 ハーフエルフ達の視線が一斉に老夫婦に集まった。老夫婦は一瞬まごついたが、すぐに気を取り直して頷いた。すると、ハーフエルフ達が驚いてざわめき出す。いけるかもしれない。変えられるかもしれない。そんな空気が漂い出す。


 オレの狙い通りの反応だ。未来が変わる可能性を示し、内外から村に揺さぶりをかけ、変化の兆しがあることを知らしめる。これでハーフエルフ達と一部のエルフ達が味方についた。全ては過去に、父から教えられたやり方だ。


 ハーフエルフ達の気運は高まっているが、マリアンは疲労で顔色が悪くなっている。栄養状態が劣悪な体で無理をさせたのだから、ここはオレがフォローしないと。そう思って彼女を休ませようとした、その時だった。


 背筋にひやりとした感覚が走った。オレは咄嗟に後ろを振り向いた。すると、森の闇の奥からツバキが、目だけを光らせてじっとこちらを見つめていた。マリアンが袖を引っ張って、声を出さずに唇だけを動かした。


 私のことは気にせずに行って。彼女は確かにそう言った。オレはマリアンをそっとその場に座らせてから、音もなくツバキの元へ向かった。


次回は9月14日に公開予定です。

ツイッターもよろしくお願いします!

https://twitter.com/nakamurayuta26


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