表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
120/142

第120話 神の権能

 特別連合チーム『砕氷の牙』は目的を達成し、解散となった。途中離脱者が続出したが、今回は特例として離脱者にも、少額ながら報酬金が支払われた。それだけ、この一件をギルドは重く見ていた、ということだろう。


 メリッサは再びまとめ役に就任した。最後の決戦での功績が評価されたのだろう。以前よりもさらに、彼女は自分の務めを意欲的に果たしていて、北東地域の開拓はますます進むことだろう。


 そして、アイスドラゴン討伐から二週間が経ち、いよいよ翌日にアンカラッドへ帰還することとなった。その夜に、ツバキから「二人きりで話したいことがある」と言われ、オレは人気のない場所でツバキと二人きりになった。


「ここなら良いだろ。それで、話って?」


「そう、ね。まずは、私とタイソンが、『星の円卓』から抜けた。理由は、トップのアーサーが、もう信じられない、から」


 まあ、そうなるだろうな。それがオレの正直な感想だった。アーサーが実際にどんな奴かは知らないが、拠点でそいつが企ててたことと、ツバキが一瞬だけ苦い表情を見せたことから、ろくな奴ではないのだろう。


「あとは忠告、ね。黄金の森に、エルフ族の住処に行くなら、気を付けなさい。『乙女座』がそこで、エルフ族の離反に、関わっていたはず、だから。あの性悪女なら、必ずそうする」


 ガマガエル君を拠点の外に、無断で捨てて隠した一件は、それに関わったエルフ族の信用を大きく傷付けた。この一件の大元は『星の円卓』なのだから、『乙女座』とやらが関わっていても、不思議ではない。


「でも、何で『乙女座』が関わったって考えているんだ。そもそも、オレ達には黄金の森に行く予定はないのに、どうしてその『乙女座』とかいう奴に気を付けないといけないんだ?」


「エルフ族の魔法を習得するために、エルフ族に恩を売った、から。彼女は魔法に対する、執着心が強いから、チャンスがあれば、どんな手段でも使う。彼女なら、間違いなくそうする」


 ツバキは嫌悪感をあらわにした。彼女の言い分を聞くに、『乙女座』とやらは女性の魔法使いらしいが、なるほど、一応の警戒はしておいた方が良さそうだ。彼女は一度、静かに深呼吸をして気持ちを落ち着かせた。


「最後に、これはある意味、予言。貴方は必ず、黄金の森を訪れる、ことになる。それも、そう遠くない内に」


 ツバキはそう言って、背中を見せて立ち去ろうとした。オレは慌てて彼女に最後の質問を投げかけた。何故、オレが必ず黄金の森に行くことになると、そう言い切れるのか。その根拠は何なのか。


「根拠なら、ある。貴方が、元プレイヤーであること。貴方が、転生の真実を知りたいと思っていること。――不思議そうな顔。でも、いずれ分かる。私が貴方のことをよく知っているのも、予言をしたのも、全て意味がある」


 最後の質問に振り向いたツバキは、そう答えると再び背中を向けた。今度こそ立ち去るつもりらしい。止める理由もなく、見送る気でいたオレの耳に、彼女の呟きが風にのって届いた。あるいは、これも彼女の狙いなのかもしれない。


「そう、全ては『神の権能』に――」


 もうすぐ、冬が終わる。春の嵐が、訪れる。


次回は6月1日に公開予定です。

ツイッターもよろしくお願いします!

https://twitter.com/nakamurayuta26


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ