表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
113/146

第113話 奮い立ちて

 氷の息吹が強烈な冷気の嵐として迫り来る中、オレの脳裏で過去に経験した様々な場面が、次々と瞬いては消えていく。走馬灯だろうか。いや、違う。この状況を打開するためだ。オレはいくつかの場面を選び取り、次の行動を決めた。


「『火の元素よ、我が声に応えよ。水の脅威から、我が身を守れ』!」


 オレの元素魔法語による呼びかけに応え、赤色のオーラがオレの全身を覆った。その瞬間、厳冬の寒さを感じなくなり、体の芯が熱くなった。こんなこともあろうかと、エマニエルと一緒に開発した新しい元素魔法だ。その名も、『豪火の羽衣』。


 さらに、新スキル『不動の守護者』を発動した。これは発動中、その場から自力でほとんど動けなくなる代わりに、本来受けるはずだったダメージを、大幅にカットしてくれるスキルだ。それに加え、『鉄壁の盾』も発動して衝撃緩和の効果を得る。


 冷気の嵐が目と鼻の先まで迫っている。オレは全てを受け止めんと身構えた。そして、オレは冷気の嵐に呑み込まれた。盾と鎧の表面が急速に凍り付いていく。全身から湯気が出て、体から熱が失われていく。


 備えがなければとっくに凍死していたが、備えをしていてもなお、冷気の嵐はオレの意識を奪っていく。それでも、オレは完全に意識を失わない。かつての約束が、オレの意識を繋ぎとめる。守りたいという意志が、オレの心を奮い立たせ、熱くする!


 そして、冷気の嵐が去り、生き残ったオレとタイソンを目にしたアイスドラゴンは、今度は驚きで目を見開いた。おそらく、奴にしてみれば、自分の必殺技を受けて生存する人族など、想像したことすらなかったのだろう。そのことが、奴に大きな隙を生んだ。


 右前足に巻き付いたままのワイヤーを再び引っ張られ、不意をつかれたアイスドラゴンは、大きな音を立てて横倒しになった。そんな奴の醜態を見た『砕氷の牙』の面々は、喝采を上げ、己を奮い立たせ、次々と武器を手に奴へと群がっていく。


「どうして、俺を、助けた?」


 タイソンが息も絶え絶えにそう言った。確かに今のタイソンにしてみれば、オレの行動は不可解だったかもしれない。でも、理由はちゃんとある。『砕氷の牙』の総攻撃を見守りながら、オレは深く、深く息を吸った。


「『もし、どちらかが困ったり悩んだりしていたら、お互いに助け合おう。それがきっと、友人として、ヒーローとして正しい在り方だから』」


 精一杯の勇気を振り絞っても、ほんの少し声が震えた。背後でタイソンが息を呑む気配がした。言えた。伝わっただろうか。受け入れてくれるだろうか。外界の音が全て遠ざかり、鼓動の音だけが聞こえる。


 ゆっくりと時間が流れる、静寂の世界。そこからオレを現実に引き戻したのは、ガマガエル君達が再び引き倒され、踏み潰される音だった。ガマガエル君達の最期を目にした者達は、恐れをなして竜から離れた。


 アイスドラゴンの全身には小さな傷がいくつもついていたが、頭部だけはタイソン以外からダメージを受けていないようだ。今もなお、威嚇したり嚙みつこうとしたりして、頭部を必死に守ろうとしているように見えた。


 オレは奴のその行動に色々と引っかかるものを感じたが、やがてこちらに戦意はもうないと悟ったのか、両翼を広げて雪を吹き上げながら、西の空へよろよろと飛んでいった。


次回は4月27日に公開予定です。

ツイッターもよろしくお願いします!

https://twitter.com/nakamurayuta26


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ