第105話 暗闇の真相
メリッサのガマガエル君を運び出す準備をした後、オレ達は元覆面CとDを叩き起こした。顔を殴られ、腹を蹴られた二人は、呻きながら地面を転がる。手足を縛られている二人に、キャロラインはさらに雪を口の中に押し込んだ。
「おはよう、お二人さん。気分の方はいかがかしら。起きたばかりで悪いけど、いくつか質問に答えてくれないかしら?」
「分かった。知っていることは全部話す。だから、もう止めてくれ!」
微笑みながら圧力をかけてくるキャロラインに、元覆面Cはすぐに音を上げた。元覆面Dも首を何度も縦に振る。彼らの覆面はすでに剥ぎ取られているので、顔面蒼白でひどく怯えているのがよく分かる。
「まずはどうやってガマガエル君を拠点から運び出したのか、じっくりと聞かせてもらおうかしら。嘘はつかない方が良いわよ。私、そういうの分かるから」
「は、はい。実行したのは昨日の深夜で、エルフ族の元素魔法で機械兵を俺達ごと見えなくしてから、こっちの息がかかった北門を素通りして森の中に捨てたんです」
元覆面Cの声は恐怖で震えている。エルフ族が証拠隠滅に関与しているのは、アンヌが射殺した弓使いがエルフ族だったことから、すでに予想は出来ていた。だから、そこにあまり驚きはなかった。むしろ、北門の見張りにこいつらの息がかかっていることの方が、より大きな問題だ。
「次の質問ね。犯行計画に関わっているのは何人いるのかしら。顔か名前を知っているなら、それも教えてちょうだい」
「計画を考えたのは『星の円卓』で、直接指示をしてきたのは、いつも指令室の出入り口を守っている二人の男です。『これ』を使って、そいつらから指示を受けていました。計画に関わった人数はよく分かりません」
元覆面Cが『これ』と言って震える手で差し出したそれは、オレにとって見覚えのある物だった。それは、転生前の世界で『スマホ』と呼ばれていた物だった。思わぬ物の登場にオレは衝撃を受けたが、それ以上にショックだったのはメリッサだろう。信用していた二人に裏切られていたのだから。
「かなり精巧そうな物ね。誰が作ったのかしら。ああ、もしかしてガマガエル君に細工をした人かしら。もちろん、教えてくれるわよね?」
「はい、はい、全て教えます。細工をしたのは防壁の保守整備をしているドワーフで、さっき渡したそれを作ったのは『星の円卓』の奴らです。実際に使えるかテストしていると、作った奴らが言っていました」
細工されていた痕跡をメリッサが見つけたのは、ガマガエル君を運び出す準備をしていた時だった。油を撒こうとしたら、全ての動作に不具合が生じる細工らしい。その細工はすでに取り除かれているが、痕跡ははっきりと残っているとメリッサは言った。
「細工したドワーフとエルフ族の増援、それから指令室の番人の二人が、『星の円卓』に協力した理由。それと、『星の円卓』がこんな大がかりな犯行計画を立てた、その理由は?」
「ドワーフは保守派の復権、エルフ族の奴らは森の保護と独占、番人の二人は借金の返済のためだと聞いたことがあります。『星の円卓』は分かりません。あいつら、秘密主義なところがあるので」
あとはもう本当に、何も知らないんです。もはや気の毒ささえ感じてしまいそうなほど、元覆面Cは怯えている。元覆面Dも同様だった。ただ、必要な情報はそろった。死体処理を終えたマキナとエマニエルが戻ってきた後、オレ達は拠点への帰路についた。
次回は3月2日に公開予定です。
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