表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

6/24

#6 気になる人 ※大石瑞希視点

 私――大石瑞希おおいしみずきは高校生になってから気になる人ができた。

 まだ好きではなく、気になっているだけ。


 その気になっている人の名前は、酒井祐希さかいゆうき

 酒井くんの人気は学校中だけでは収まらず、他校までもその噂は広がっている。


「あれ? 酒井くん、どうしたの?」


 いつも授業中は寝ていて、何をやっているのかすらわからない黒板をぼんやりと見てから酒井くんを見ると、疲れた顔で机に突っ伏していた。


「別に何もないよ。ただ疲れたな〜、って」


「確かに。まあ、それは置いといて、これから何か予定とかあったりする?」


 今日は、この前に行ったカフェに2人だけで行きたいと考えていた。

 2人では無理だ、といつも断られているけど、私は諦めが悪いから、このように何度も誘っている。


「ごめん……今日はちょっと……」


「そっか……残念。また今度ね!」


 今日もいつも通り断られた。


 まあ、断られるのはわかってたけど、人気者な酒井くんと2人きりになれるチャンスがあるだけ、まだマシだろう。

 酒井くんとお近づきにすらなれていない人なんて、この学校にはたくさんいるわけだし。


「うん。ちゃんと埋め合わせするから」


 いつもは断られるだけだから、恐らく今日はこれから何か用事があるのだろう。

 それなら、私もさすがに引かざるを得ない。


「わかった」



 酒井くんに誘いを断られた私は、仲のいい友達2人と教室で勉強していた。

 正確には、勉強していたと言うより、今日寝ていた授業の分のノートを写させてもらっていた。


「ありがとう! 本当に助かったよ!」


「全然大丈夫だよ〜」


 元々、仲のいい友達2人は教室で勉強してから帰ると決めていたらしく、私も混ざって勉強するのを快諾してくれた。


「「それよりそれより!」」


 仲のいい友達2人は、目を輝かせて詰め寄ってくる。


「「酒井くんとはどうなの?」」


「別にまだ何もないけど……」


 え!? と目を丸くして驚く2人。

 そんな驚くことではないと思うけれど、恐らく酒井くんとこの学校で一番仲がいいのは私だ。

 その私が全く進展がないというのは、予想外なのだろう。


「いつも放課後に遊ぼ〜って誘っても、断られてばっかりだし」


 私だって悔しい。今まで毎日のように、酒井くんを誘っても、毎日のように断られてきた。


 もしかして……彼女がいる、とか……?


 前に聞いた時はいないと言っていたが、他校からもモテモテな酒井くんなら十分に有り得る。

 でも、もし本当にそうだったらどうしよう……


「そうなんだ……ねぇ、今日は私たちと遊ばない?まだ一度もこの3人で遊んだことないし!」


「それいいね! 遊ぼ遊ぼ」


「うん……ありがとう」


 恐らくこの2人は私に気を遣ってくれたのだろう。素直に感謝しかない。



 学校を出て、私たち3人は駅前にあるカフェに向かった。

 本当なら酒井くんと2人で来たかったけど、女子だけでカフェというのも悪くない。



「そういえばさ、大石さんは酒井くんと連絡先交換したの?」


 最近ハマっている黒蜜カフェオレを注文し、3人で雑談しながら届くのを待っていると、急にそんな質問が飛んできた。


「実はまだ……」


「「え〜!!!! 大石さんなら交換してると思ったのに〜!!」」


 そう、私は未だ酒井くんと連絡先を交換していない。

 これは決して私が意気地無しなのではなく、聞いても教えてもらえないと分かっているからである。


「誰か交換してる女子いないかな〜?」


「いないと思うよー。酒井くん、クラスの男子たちとも交換してないっぽいから」


「へぇ〜、そうなんだ!」


 学校中だけでなく他校からもモテモテな酒井くんは、当然色々な人から連絡先の交換を求められている。

 本人から聞いた話だと、誰か1人とでも連絡先を交換してしまったら、拡散されたりその人だけずるい! ということになり兼ねないから、誰とも交換しないらしい。


 その話を聞いたのは私が連絡先を聞こうと思った前だから、遠回しに聞いても無駄だと言われたのだ。

 他の人にこのことを話したのかは分からないけど、牽制されているのに聞いても無駄でしかない。



 本当は私だって、酒井くんとメールとか電話とかしたいんだけどね!!


 そう心の中で叫ぶと同時に、私たちのもとに頼んだ物が運ばれてきた。

 ん〜! 今日も黒蜜カフェオレは美味しい!



 その後も閉店間際まで3人でカフェに入り浸り、たくさん喋れてすごく楽しかった。


 そしてカフェを出て、並んで駅の改札に向かっている途中、目の前から歩いてくる男女に目を奪われる。

 暗くて顔はよく分からないが、雰囲気的には美男美女。


 美男美女のカップルなんて今すぐ爆発してしまえ! と、思っていたのも束の間。

 暗くて分からなかった顔も、近づけば近づくほどはっきりと見えてくる。


 美女の方は誰かは知らない。

 でも、美男の方は今ではよく知っている人物だった。


「……あれ? 酒井、くん……?」


 それからのことはよく覚えていない。

 カッとなって、考えるよりも先に言葉が出ていた気がする。


 我に戻った時には目から涙が溢れていて、周りに酒井くんはいなかった。

 私はただ泣いていて、さっきまで一緒にいた2人が慰めてくれている。


 はぁ……やっぱり酒井くんには彼女いたのか。

 それならそうと言ってくれればよかったのにな……

ここまで御覧いただきありがとうございます。

もし面白い、続きが気になると思ったら、

ブックマークの追加や画面下の「☆☆☆☆☆」から評価をした上でこれからも読んでいただけると幸いです。これからもよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ