#24 呼び出し
放課後になり、斎藤と勉強をするため図書室に向かうと、既に斎藤は図書室で勉強を始めていた。
当然開いているのは、英語の教科書とノートだ。
「斎藤、早いな」
「酒井祐希が遅すぎるだけよ」
「これでもショートホームルーム終わってすぐ来たんだけどな……」
僕は間違ったことは言っていない。
ショートホームルームが終わってすぐに歩いて図書室に来たが、ただ斎藤が早く来すぎているだけなのだ。
「まぁ、遅れてごめん」
「ん。早く勉強しましょ」
「ああ」
宮崎には『1時間だけ待ってくれ』とメールをしたため、とりあえず怒られることはないだろう。
しかし、今朝の宮崎の発言からして何をされるのか、何が目的なのかが全く分からない。
『というわけで今日の放課後、私のために時間作ってね』
『私のために』これがどういう意味で使われているのか。
宮崎のことだから恐らく遊びなどの誘いだと思うが、すごく気になるのは言うまでもない。
そして1時間程斎藤と勉強をし、届いていたメールを確認して宮崎が待っているという公園に向かった。
公園で遊ぶのかと思ったがどうやら違うらしく、話があるとだけメールには記されてあった。
僕は定期テスト1週間前から今日まで、宮崎とは1度も会っていなかった。
何回かメールでやり取りはしていたが、知らないうちにその間で何か宮崎が不快に思うことでもしたのだろうかと心配になる。
「なんでだろう……すごく嫌な予感がする」
宮崎が待っていると言った公園、そこは大きな池とアスレチックがある場所だ。
そして池を横断できる橋の真ん中で待っているらしい。
うーん……もしかして、僕はこれから池に落とされるのか?
そろそろ夏といっても、まだ暖かいわけではない。もしこれから池に落とされるなら、風邪を引くのは間違いないだろう。
呼ばれたからには覚悟を決めるしかない……か。
「あ……あれは宮崎か?」
橋の中央で池を眺めている1人の少女。
その子が宮崎かはまだ断定できないが、一応行ってみるとしよう。
「やっぱり宮崎か。待たせてごめん」
「それは別にいいけど……また可愛い女の子と勉強でもしてたの?」
「あぁ……うん、まぁ」
ここではぐらかしたとしても、どうせ池に落とされるなら無駄だと思い、諦めて肯定する。
そんな僕の返答を聞いた宮崎は「そっか……」と言って、眺めていた池から視線を僕に移した。
「ねぇ、突然で悪いんだけど、酒井くんって今好きな人いるの?」
「……え?」
僕は宮崎が言った『突然で悪いんだけど』の時、池に落とされると思って目を瞑った。
しかし、その後には予想外の言葉が飛んできた。
「好きな人、いるの? いないの?」
「いない……と思う」
「……そっか」
それからはしばらく沈黙が流れた。
宮崎がここに呼び出した理由は、僕に好きな人がいるのか聞きたかったから、ではないだろう。そんなことだけで、わざわざ人気の少ない場所まで呼び出す必要はないはずだからだ。
ということは、それ以外にも話したいことがあるのだろう。誰にも聞かれてはいけない何かを。
「……実はね、私には好きな人がいるの」
宮崎はほんのりと頬を赤く染めながら、沈黙を破った。
「その人とは高校生になってから話すようになってね。色々な女の子からモテてて、すごくかっこいいの」
僕は黙りながら首を縦に振って、宮崎の続きを促す。
「でも私は中学の頃、その人にとても酷いことをしちゃった。あの時のことは後悔してもし尽くせない。
どうして恥ずかしかったからって、罰ゲームだなんて言っちゃったんだろう。悪口を言っちゃったんだろうって。
だから、もしかしたら私にはもう気持ちを伝える資格なんてないのかもしれない。それでも私は伝えたい。ずっとずっと好きだったから……」
宮崎はスカートを強く握って俯き、しばらく時間を置いてから再び僕の目を見た。
「――私はあなたのことが好きです」




