#22 私、バカみたい ※大石瑞希視点
斎藤さんの正論に何も言い返せなくなった私――大石瑞希は、逃げるように図書室を出た。
お願いをすれば、一緒に勉強させてくれる。
一緒に勉強をすることになれば、酒井くんと過ごす時間が増える。
酒井くんと過ごす時間が増えれば、宮崎さんよりも酒井くんと仲良くなれる。
斎藤さんに断られるつい先程までそう考えていた私がバカみたいだ。
私はそこまで勉強が好きじゃないし、もしお願いを受け入れてくれててもきっと勉強なんてしなかっただろう。
「恥ずかしいなぁ……正論を言われたら逃げるなんて。酒井くん、絶対私のこと最低な女だって思ったよね」
はぁ……と何度ついたか分からないため息をつく。
最初から勉強をする気もないのに私もやるとか言って、ふざけてるにも程があるよね。
「今日はもう戻れないし、明日になったら2人に謝らないとな……」
そう固く決意し、学校を後にした。
校門から出ると、恐らく酒井くんのことを見に来たであろう他校の女子たちがたくさんいた。
そんな他校の女子たちの中には、最近になって見知った顔があった。
「宮崎さんも酒井くんのこと見に来たの? 違う高校だもんねー、可哀想に」
少し前に酒井くんのことで宣戦布告をした相手、宮崎さんの隣にはもう1人女子がいるけど関係ない。
「葵、知り合い?」
「うーん、知らない」
「おい」
私の言葉に全く耳を傾けない宮崎さん。
それに加えて私のことを知らないだなんて、さすがに酷くないかと思う。
「……で、私に何か用?」
「どうせ酒井くんのこと待ってるんでしょ? 今日は待っても無駄だから、早く帰った方がいいよ。あ、今日だけじゃなくてこれからずっとかも」
「は?」
違う高校に通っている宮崎さんは、当然今の酒井くんが誰といるか、どこにいるかなんて知りはしない。
知らない方がいいことだって、あるかもしれないけど……
「酒井くんね、彼女できたんだよ」
「「「え!?」」」
からかってみたくなって嘘をついてみると、宮崎さんだけじゃなく隣にいた子、周りで酒井くんを待っていたであろう他校の女子たちが素っ頓狂な声を上げた。
やばい、ちょっと面白いかも。
「嘘だよ」
「「「はぁ……」」」
先程素っ頓狂な声を上げた女子たちは、安堵のため息をついた。
「私に話しかけてきたのって、もしかしてからかいたかっただけ?」
怒っているのか、宮崎さんの声はちょっとトゲトゲしい。
「そんなわけないじゃん。でも、本当に1時間くらい待ってても酒井くんは出てこないと思うよ」
「ふーん」
「酒井くん、今女の子に勉強教えてるから」
「「「はぁ!?」」」
再び周りから聞こえてくる素っ頓狂な声。
やばい、本当に面白すぎる。
「そそそそそれって、2人で勉強してるってこと!?」
「うん」
「ふ、ふ〜ん? じゃあ私も一緒に勉強教えてもらおうかな〜?」
あ、ここで「いいんじゃない?」とか言ってみれば、宮崎さんも私と同じように正論言われて何も言えなくなるんだ。
すごく面白そう……! だけど。
「止めておいた方がいいよ。私もそう思ってお願いしてみたけど、即答で断られたから。まぁ、それでもいいなら何時間も待ってお願いすれば? それじゃあ私は帰るから、じゃあね〜」
言うだけ言って私は退散する。
ここで宮崎さんと長話をしてたら、面倒なことに巻き込まれそうだし。
宮崎さんがこれからどうするかは気になるけど、酒井くん絡みだったら後で酒井くんに聞けばいい。
そう思って、私は1人で帰路に就いたのだった。




