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3リーナ

自宅に戻って来たノース公爵とリーナ。

深夜だというのに屋敷中が光に覆われていた。

リーナが家出をしてから約1時間、全従業員総出で付近を探していたらしい。

父の部屋に案内されたリーナはメイドにホットミルクを入れてもらい口にする。


『…今思うと令嬢らしくない振る舞いだったわ…。』


冷静になり考えてみるリーナ。

父の後に母がやって来てリーナと対面になり座った。


「リーナ、貴女一体どれだけの人達を巻き込んだと思っているのかお分かりですか?」

「…はい。申しわけございません。」

「婚約が嫌なら嫌なりにやり方が有るでしょう。」

「…はい。」

「牧師様にもご迷惑をお掛けして…。貴女は公爵令嬢としての自覚が有るのですか?」

「今、自分の行いを後悔していた所です…。」


母は冷静に貴族らしくリーナを叱った。

父は母の説教が終わるまで黙っている。


「いいですね、今後この様な事がないように。」

「…はい…すみませんでした…。」


母は言うだけ言って部屋を出て行った。

母に散々打ちのめされたリーナは下を向いたまま。


「…ああやって怒っているが1番心配していのはお母様なんだよ。」

「分かっているわ。目が赤かったし…。」


父はやれやれと言いながら紅茶を飲んだ。


「さて…今度は冷静に話し合おうか。」

「はい…。」


婚約が決まっても1週間に1度の手紙のやり取り、1ヶ月に1度会えれば良い方で会ったとしても自分の話ばかりでリーナの話は全く聞かないので会ってもつまらない事。

そして最初は愚痴を言いに教会へ言っていたがエリオルに優しくされ惹かれていったこと。

報われないと分かっていたから結婚したら少しずつでも王子を好きになろうとしていたのに、王子は堂々と好きな相手を自分に紹介した挙句どんなに彼女が素晴らしいかを永遠と聞かされ愛想が尽きたこと。

国王命令の婚約だったのに不貞が原因の婚約破棄は王宮から何かしらの罰が下ると話したら手のひらを返して来た王子にうんざりしていて、とてもじゃないが結婚後も好きになれないし跡継ぎなんぞもってのほか、だから婚約続行するならシスターになると決め家を出たとリーナは全て話した。


「なる程。では罰が下ると知る前までは冗談ではなく本気で王子は婚約破棄を望んでいたと。」

「そうですわ。」


父は少し考え、リーナに部屋から出る様に伝えた。

冷静に話が出来た分、少なくとも王子が最初は本気で婚約破棄をしようとしていたのは伝わっただろう。




数日後、リーナは父と共に王宮の謁見室に居た。

玉座に座る国王と妃、国王の横に第5王子が立っていて国王の斜め後ろに宰相が立っていた。


挨拶を済ませ、何故呼び出したかを二人に説明する宰相。


「ノース公爵、宰相から大体の話は聞いておる。そなたからの抗議文も読ませてもらった。」


父がお辞儀をする。


「さて、ノース公爵令嬢。本気で婚約破棄を望んでいると言う事で間違いないかな?」

「はい…。」


国王の目をしっかり見て答えるリーナ。


「…我が愚息がそなたに多大なる迷惑を掛けた。第5王子とリーナ・ノースとの婚約破棄を認める。…宰相。」

「はっ。」


宰相は用紙を渡し父がサインしリーナもサインをした。

既に国王のサインがしてあり、第5王子がサインするだけだった。


「父上っ!婚約破棄を認めると言うのですかっ!?あんな冗談で行った行為だったのに!?」


婚約破棄用紙を手渡された王子が国王に喰ってかかるが国王は無表情で黙っている。


「今回の件に関しまして事実確認を行い、その結果ノース公爵令嬢の言い分が正しいと判断致しました。王子が同意書にサインされなくとも国王のサインが有るので手続き上問題なく婚約破棄されます。」


宰相はそう言ってペンを差し出した。

王子は気付いてないがリーナも父も国王のサインが書かれているのに第5王子にサインを求めると言うことは国王が第5王子を何かを試しているのだと感じた。

黙ったままの国王にまだ王子は喚いている。

宰相は止めようとしたが国王が静止した。


「お前の気持ちはよく分かった。これよりお前は廃嫡する。己の行った行為に責任を持てない者は王族には必要ない。今日中に必要最低限の物を持たせエリオル牧師の教会へ行くように。」


婚約破棄にしては随分な処罰だった。

確かにリーナは廃嫡されろとは思ったが本当にそうなるとは思わなかった。

まだ喚く王子を差し置いてリーナ達は王宮を後にした。

揺れる馬車の中でリーナは第5王子に対する処罰が重過ぎないか父に聞いた。


「私には解らないが…他にも何かやらかしていたのだろう…。でないと廃嫡までの処罰は下らないはずだ。ただの婚約破棄だけなら悪くても1年間外出禁止等が妥当だろう。」

「…そうよね。」

「いずれにせよ、我々にはもう関係のない事だ。」


リーナは頷き馬車の窓から空を見た。





一方、その頃。


「父上っ!納得出来ません!」


国王である父に喰ってかかっている第5王子。

一公爵令嬢との婚約破棄で廃嫡される事に納得が出来ていなかったのだ。


「…そうか。」


冷たくあしらう国王。


「確かに、ノース公爵令嬢以外の者を愛しノース公爵令嬢に婚約破棄を言いました。でも、それは間違いだと気付きノース公爵令嬢に永遠の愛を誓い謝罪に行ったのです!それなのに…婚約破棄するなんて…。しかも廃嫡だなんて納得いきません。」


全て調査済みと言われた為、正直に事の顛末を話した王子。

まだ話の途中だったがメイドが王子の荷造りを終えた事を知らせに来た。

国王はメイドを下がらせた。

そして、元々表では国王命令だと言っていたが国王がノース公爵に頭を下げ結んだ縁談だった事を明かした。

本来なら他国から姫を娶り国と国同士の信頼関係を確固たるものにするはずだったが家庭教師や第5王子を取り巻く人々の話を聞く限りとてもじゃないが他国の姫を任せられないと思い、年も近い子供のいるノース公爵に頭を下げたのだった。


「年月が経ち、ノース公爵令嬢は素晴らしい女性になったがお前はどうだ…。傲慢な性格は変わらず権力を振りかざす子供のままだ。挙句、他に女を作るとは…。それだけではない。その女の為にお前が何をしたか知らんとでも思っているのかっ!わしの顔に泥を塗るだけでは足りないかっ!」

「っっ!!」


第5王子は押し黙った。

王子とマリンがイチャついている所を見ていたメイドが何人か居て注意を受けた。

逆に王子である自分に指図するなと怒鳴り散らし、その騒動が王子の母親の耳に入り王子は1ヶ月の謹慎を命ぜられた。

謹慎が解かれた後、王宮でマリンとイチャ付けなくなった王子は腹いせにマリンと共にメイド達を散々虐め辞めさせるまで追い詰めた。

それだけではなく嫁いで行った姉のドレスルームに入ったマリンが何点ものドレスを欲しがり与え貴金属も勝手にあげていたのだ。

自分が貰っている小遣いだけではマリンとの毎日のデート代やプレゼン代を賄う事が出来ず、マリンが欲しがらなかった姉の貴金属を売っていたのだ。


「命が有るだけありがたいと思え。第三妃は離宮に移動させる。」

「そんなっ!!待ってくださいっ!!お母様には関係ない事です!!」


第5王子の母である第三妃。

本来なら離宮は国王が老後に住む場所だが退任もしていないうちに妃を離宮に下がらせると言う事は今後、王宮に足を踏み入れるのは許さないという意味でも有るのだ。


「お前を諌められなかった罰だ。お前の母親は承知しているぞ。」

「…そんな…。最後にお母様に会わせてください!お願いします!」

「…連れていけ。」


国王は衛兵に指示し王子の前から立ち去った。


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