表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/8

1リーナ

『ふふ…。何て素敵な話でしょう。』


ボロボロになった本を静かに閉じる。

彼女の名前はリーナ・ノース公爵令嬢。

巨大な五大陸の中心に海に囲まれた広大な島国の

アーシャンの北の土地の管理を任させれているノース公爵の娘だ。。

北の土地は魚介類は勿論、真珠や高級な海産物が豊富に採れ市民の生活を支えている。

リーナは北の土地で1番美しいと言われていて王位継承権5位の王子との結婚が決まっていた。


ある日、王子に呼び出されついに入籍日の相談かとお洒落をして王宮に向かうとそこには俯く娘とリーナを真っ直ぐ見つめる王子が居た。

これは入籍日の相談ではないなと感じたリーナは王子に問い掛けた。


「本日はお招き頂き誠にありがとうございます。どの様なご用件でしょうか。」

「リーナ・ノース公爵令嬢。婚約を破棄して欲しい。…心から愛する人が出来たんだ。」


そう言って王子は俯いたままの娘をリーナに紹介した。


「彼女はマリン。教会で子供達に勉強を教えているんだ。マリンの優しさと飾らない姿が愛おしいんだ。それにとても可愛い人なんだ。」


リーナが何も言わない事を良い事にいかにマリンが優しいか可愛いか永遠と話し続ける王子。


『…黙っていれば好き放題言いやがって…。このクソ馬鹿王子っっ!!』


心の中で王子を10回以上ぶん殴ってから最上級の微笑みをするリーナに王子は穏便に婚約破棄が出来ると思ったのだろう目が輝いていた。


「さようですか。ならば国王と私の父であるノース公爵にも伝えないといけませんね。その結果、貴方とマリモさん?でしたっけ?がどうなろうが私には関係ありませんよね?だって私は一方的に婚約破棄されたんですもの。」

「…え…?ちょっと待ってくれ!父やノース公爵にも言うのか!?」


リーナは婚約は国王の命令で決まったことである以上、隠して婚約破棄など出来ないと言い、国王の命令を無視した形となるので罰せられるのは自分ではないとはっきりと言った。

それを聞いた王子はオロオロしだした。


「なっならば第1夫人の名をお前にやりマリンを第2夫人として娶れば良いだけの話だな。いや、忙しい中呼び出してすまなかった。もう帰っていいぞ。」

「それは出来ませんわ。何故ならこの国は国王以外複数の伴侶を作ってはいけないんですもの。まさかご存知ないなんて事はございませんよねぇぇぇえ???」


先程からリーナに対する態度が酷かったのでリーナは小馬鹿にしながら言った。


「婚約破棄承りました。では早速父に報告しなくてはならないので失礼しますわ。おほほほっ!!」


リーナは出来る限り優雅に早足で王子の前から去って行った。

リーナが去った後、残された王子とマリンは呆然とした。


「…だ…大丈夫。マリン、そんな心配そうな顔をするな。私が必ず守るから。」

「王子様…。」


マリンは王子の胸に顔を近付ける。





一方的、リーナは既に屋敷に帰っていて実務室で仕事をしている父に事のあらましを多少大袈裟にして告げた。

そして告げ終わったリーナは涙を流した。

それを見たノース公爵は大激怒した。

産まれた時から愛情を十二分に注ぎ手塩にかけ、蝶よ花よと育てた娘を苦しめる第5王子を許さなかった。

ノース公爵は早急に国王に手紙を書き執事に届けさせた。


『何て頭がお花畑なんでしょう。廃嫡になれば良いんだわ。』


リーナは気分転換に教会に行く事にした。


「エリオル牧師、ご機嫌よう。」


リーナ行きつけの教会にはリーナ好みの牧師が居る。

背が高く黒髪短髪のイケメンだ。


「ノース公爵令嬢、こんにちは。」


微笑みリーナに挨拶をする。

貴族は教会に訪れる都度1ゴールドの寄付を命ぜられている。

リーナはエリオルに寄付を渡した。


「お恵みを感謝致します。ノース公爵令嬢に大地と海の神の祝福があらん事を…。」


一通りお祈りを受けたリーナはエリオルに聞いた。


「この国には邪心を持たない人々だと思いますか?」

「突然どうされたんですか?」

「…いえ…何となく…。」

「話しを聞きますので、懺悔室に行きましょう。」


エリオルに諭され懺悔室に向うリーナ。

小部屋に入りエリオルはリーナに微笑んだ。


「さて、先程の質問に答えましょう。この国に住まう民達は純粋な心だけを持っているわけではありません。」

「…それ牧師様が言うっていいんですか?」

「勿論です。邪心が有るから人は働きお金を稼ぎ、生命の命を奪い食します。服を纏います。邪心が有るからこそ人々は悩み苦しむのです。」


エリオルは邪心と欲はイコールで有り人は欲の塊で出来ている為、邪心のない人などいないと答えた。


「でもお伽噺では邪心のない人しか辿り着けないと…。」

「それはあくまでもお伽噺話しですよ。」


きっぱり言い切るエリオル。


「…そっか…。牧師様、今日婚約破棄をされました…。好きな方が出来たと言われ、目の前でいかに好きな方を愛しているかを聞かされましたの…。」

「…そうでしたか…。さぞ辛かったでしょう…。」


俯きながら話すリーナ。


「…辛い?…いいえ、辛くはありませんでした。一方的に婚約者破棄されたので国王に知られて罰を受けろ、地獄に堕ちろクソ野郎と思いました。」


それを聞いたエリオルは口から笑いが出そうになるのを必死で抑えていたが肩の震えは抑えられなかった。

まさか美しい人からクソ野郎なんて言葉が出るとは思わなったのだ。


「こんな恐ろしい事を思った私にはきっと二人の神様から天罰が下るだろうと思い気が気じゃなかったのです。」

「な…なるほど。ノース公爵令嬢、大丈夫です。貴女は毎日信仰心を忘れず教会に来て祈りを捧げています。神はきっと貴女をお赦しになりますよ。」


リーナな毎日教会に来ているのは信仰心からではなくエリオルに会いに行く為だったし、落ち込んでいる振りをすればエリオルが優しく励ましてくれると知っていたからだ。

リーナは涙ぐみながらエリオルにお礼を言って教会を後にした。


「諦め掛けてたエリオルを私のモノにして見せるわ!!」




「と言う事で、どうすればエリオルを落とせるか作戦会議よ。」


自宅に戻ったリーナは自分専属のメイドを集め作戦会議を開いた。


「贈り物を贈っては如何ですか?」

「お出掛けに誘ってみては?」


様々な意見が出てリーナはメモをする。


「あなた達。こんな所で仕事をサボっているなんて…。」


メイド長がやって来てメイド達は慌て、アレコレ言い訳をしリーナもメイド達を庇った。

バンッとメイド長が机を叩き皆を静かにさせる。


「…話は分かりました。デートや贈り物の前に名前で呼ばれる努力をなさるのが良いでしょう。」

「…名前。」


メイド達は、おぉっと納得しリーナはエリオルに名前で呼ばれる事を想像した。

思う以上に嬉し恥ずかしだったのかリーナは顔を赤くした。


「そっそうと決まったら早速行ってくるわ!」


立ち上がり教会に行こうとするリーナをメイド長が肩を掴んで静止した。


「今日はもう行かれましたよね?一日に何度も訪ねてはいけません。明日になさってください。」






次の日、朝早く教会に行こうとするリーナをメイド達が止めた。


「牧師様は朝、忙しいと聞きます。昼食後に行かれるのが宜しいかと…。」

「そう…なら午後に行くわ…。」


明らかにテンションが落ちるリーナ。

本を引っ張り出して読み始めるが時間が気になって頭に入ってこず1分に1度位の感覚で時計を見てはため息をつく。


「リーナッ!」


勢い良く図書室のドアが開く。

そこには第5王子の姿。

つかつかとリーナの元へ行く王子。


「何か御用かしら?」

「昨日のアレは冗談なんだ!お前の愛を確かめる為にした行動だったんだ!なのに話も聞かずさっさと帰りノース公爵に言うなんて!お陰で父上にも知られてしまったではないか!今から父上の所へ行き冗談を真に受けた事を謝罪しに行けよ!!」


どうやら婚約破棄が事実なら、まず婚約者が居る事を知りながら王子に近付き恋仲となったマリンの処遇を決めなければならない事、その次は婚約者が居ながらマリンと恋仲になった第5王子の処遇を決めると国王に言われた王子は慌ててやって来たらしい。

最後の方は命令口調になっているのを指摘したいと思いながら、いい気味だと思った。


「お断りしますわ。どうぞそこら辺に転がっている小石以下の私よりもお月様の様な貴方様の唯一の女性マリン様を大事になさってください。」

「なっっ!!」


リーナが言った言葉は全て昨日王子が言ってきた事だった。


「お前!王族であるこの私がわざわざ出向いてやったのにその口の聞き方はなんだ!この私を侮辱するなっ!」

「おほほっ!!侮辱ですって?貴方様の自慢は王族で継承権第5位の王子と言う事ですが、第5位の王子なんて継承権がないに等しいじゃないですか。」


第1位の王子は留学から既に戻って来ており現在は外交に携わる仕事をしながら国王の仕事を少しずつ勉強している。

第2位の王子も同じく留学から戻って来ており兄の仕事を手伝っている。

第3位の王子は現在留学中だが帰国後、第1、第2王子を支えるつもりで有る事、第4位の王子は兄3人が居れば自分は要らないだろうと何処かに行ってしまったが噂では国王とはいつでも連絡を取れるところに居るらしい。

言い方が悪いが不幸が立て続けに起き4人の王子が死亡または廃嫡されないと第5王子は国王になれない。

はっきり言って望み激薄な立場だ。

それなのにいつまで僅かな希望に縋っているのか馬鹿なのかアホなのかとリーナはオブラート1枚包んで王子に言った。


「!!おまっ!お前っ!!」

「こう言うのを侮辱と言いますのよ。…そして早くここから立ち去らなければ不法侵入罪不敬罪で貴方をつまみ出さなければなりませんわ。それを知ったお父上はどうなさるのかしらね?」


意味有りげに微笑みながらリーナは言った。

既に図書室のドアの前にはノース公爵家屈指の騎士二人が王子を見張る為立っていた。


「…くっ!!…優しくしてれば付け上がりやがって…!」

「どこら辺が優しかったのですか?私には全然分かりませんわ。…王子がお帰りです。外まで丁重にお連れして。」


騎士はリーナの言葉を聞くと半ば強引に王子を連れて行った。


『あんなのが国王になったら3日で国が潰れるわ。』



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ