第7話 仲間達の気遣い
「朝ですよ、起きてください」
背中をトントンと叩かれる振動で、俺は目を覚ました。
「あぁ……寝ちゃってたか、俺は」
机に突っ伏して、いつの間にか眠っていたようだ。顔を上げて、後ろを振り向くとそこにユナの姿。一緒にホーリィとローリエもいる。
「3人揃って、どうしたんだ?」
「みんな、グレン様の事を心配していたんですよ」
ユナが言う。そうか、昨日はかなり荒れてたもんな。
「でも、大丈夫そうですね」
部屋はあれから片付けた。そして研究は一旦止めて、エルフの書物を読んで時間を潰した。そしたら睡魔がやってきて、そのまま本を閉じて寝てしまった。
また例の、悪い夢を見た気がする。どうにも頭がスッキリしないが、踏ん切りはついた。エリナとはもう一度、時間を取って話してみよう。
「あぁ、平気だ。すまん、迷惑をかけたな」
「迷惑だなどと思っていません。私はずっとグレン様のお傍に仕える身、主たるグレン様にはいつでも壮健でいてもらわなくてはなりませんから。悩み事があるのでしたらいつでも何でも話してくださいね」
「助かるよ」
「おイモ、食べます?」
懐から温かいイモを取り出し俺に手渡してくるローリエ。いつも持ち歩いてるのだろうか……。
「お、おう……」
押し付けられたのでそのまま受け取って、皮を剥いて少し齧る。うん、まぁまぁ甘くておいしい。
「グレン様、一応報告なのですが今日からエルフ用の新たなポーション、“クリーチャー・エンジン”の試用テストを開始します」
「そうか。遂に」
「ええ、始めは魔力特性の高いエルフの方々に協力頂き、性能と副作用の確認を行います。恐らく、成分的にエルフなら問題なく運用できるかと」
“エルフなら”とユナが前置きしているのは人間には使えない代物だからだ。効果は強烈だが人間には耐えられないだろう。一部の極めて強力な魔導師を除いて。
「実地テストをご覧になられますか?」
「いや、ユナがついているなら大丈夫だろう。俺は俺で、やることがある」
ワイバーンの中でも最大のサイズを誇るペリル。かつて親を人間の冒険者に狩られ、自身も深い傷を負わされた経験を持つ狂暴な飛竜だ。
エリナは、あの暴れ竜をよくコントロールしていると思う。いつの間にあんなに心を通わせたのだろう。昨日、大空を自在に飛ぶ幼馴染の姿を見て、俺は驚いた。
エリナには飛竜乗りの才能がある。それは間違いない。だが、だからこそ、意地を張って無茶なことはしないで欲しい。今は何を言っても聞く耳を持ってもらえないから、俺に出来ることは薬を作ることか、あるいは何らかの装備を送ることくらい。
エリナのボディスーツにはまだまだ改良の余地がある。もっと耐衝撃性能と耐火性能を上げ、ペリルの火炎に巻き込まれたとしても無事でいられるようにしたい。
まさかあのペリルに乗ってるとは思わなかったから、今のスーツの耐火性能は甘い。もっとアラクネの糸を厚く重ねなくては。
「そうですか。かしこまりました。私達にお手伝い出来ることがあれば何なりとお申し付けください」
「ありがとう」
「いえ。昨日のように取り乱したグレン様の姿は見たくありませんので」
ユナはそう言うとにっこりと微笑み、ホーリィの腕を掴んで、
「さ、あなたは私と一緒に来なさい」
「きゃっ! ユナちゃんったら強引~!」
へらへらする彼女を引っ張って去っていった。
「もご、もごご?」
「いや、二個目はいらないよローリエ」
イモ、いくつ持ってるんだよコイツは……。




