第3話 深夜の座談会
「どうぞ」
ユナが温かなスープが入ったカップを俺に手渡してくれた。
「ありがとう。頂くよ」
俺の隣ではローリエがふかしたイモを(ちなみに3本目)口に咥えてモゴモゴさせていた。本当に、よく食うな……。
「堂々と入って来られたらよろしいのでは? グレン様」
「いやぁ、二人が仲良さそうにしてたから邪魔するのは悪いなと思ってね」
「仲が良いわけではありません。私はホーリィさんに早く一人前の薬法師になってもらう為に、こうして特別授業をしていただけです」
口を尖らせるユナに背後から忍び寄り、バッと抱きつくホーリィ。
「ちょっと、あなた!」
「ツンツンしてますけど、ユナちゃんと私は本当は凄く仲良しなんですよぉ!」
ユナは背が低いのでホーリィと比べると大人と子供みたいな感じだ。じたばたして逃れようとするユナの頭に頬を寄せて愛おしそうに擦り付けているホーリィ。
「気持ち悪いですね! 止めてくださらない?」
「ふふっ、ユナちゃん可愛いー」
ううむ……いい。
こういうのもまた、いいな。趣がある。どっちも胸が大きいし。
「もご、もごごご、もごご?」
「イモ食い終わってから喋れよ、ローリエ……」
「もぐ、ゴクリ……あぁ、すみません、つい。ところでそろそろ教えてくれませんか? グレンさんは一体誰と夜伽を」
「コラッ! てめぇ!」
めんどくせぇ! 慌ててローリエの口を抑えつけるも、ユナとホーリィから露骨に不審な目で見られる俺。
「いや、あのね……誤解だから、誤解」
「グレン様、あなたは酷い人です。私という女がありながら」
「え、ユナちゃんだけズルい! このホーリィも、グレン様さえ良ければいつでもお相手できますよ?」
「もご、もごもご、もぐもぐ」
「おい、4本目を食うなよ!」
いつの間に新たなイモを取り出したんだよコイツは……。
「まぁ、グレン様なら仕方がないでしょう。あなたはとても魅力的な方です。少々の浮気はこの際、認めましょう。しかし最終的には私のものですからね、忘れないでくださいね」
強引だなぁ、ユナよ。
「あ、でもでもグレンさんにはエリナさんがいますもんね」
ホーリィが言う。
そうそう、エリナだ。アイツ最近、妙に素っ気ないんだよなぁ。
「今日、エリナ様をお見掛けしましたが、たいへん熱心に訓練されているようでしたよ」
「だろうね。このところ毎日、飛竜乗りの練習だ」
アルフヘイムへ来てすぐに、エリナはワイバーンに乗りたいと言い出した。確かにアイツは昔っから乗馬のスキルに長けていた。馬上でのバランス感覚はワイバーンに乗る際にも大いに役立つだろうし、エリナの運動神経なら練習すれば十分にモノになるだろう。
だが、そんなに毎日毎日必死に練習してどうするつもりなんだろう。よくわからんなぁ。
「一度くらい、見に行ってあげたらどうです? エリナ様もきっと喜ばれるでしょう」
「そうかぁ? 俺なんか行っても邪魔になるだけじゃないか?」
「いえ、そんな事はないでしょう。あれだけ頑張っておられるのですから労いの言葉くらい、かけてきてあげたらいかがです?」
「あ! じゃあ私も行きます!」
「ホーリィさん、あなたはダメです! まだ魔素分解の特訓が済んでいません」
「ええーっ! ユナちゃん厳しい!」
「もごご、もぐっ」
5本目!?