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第16話 グレンの策略、イーノの動揺

「イーノ様! イーノ様ぁ! 大変です!」


 血相を変えた兵士が、アクラッツ市長候補の選挙事務所へ駆け込んできた。

 それは選挙戦まであと2日に迫った朝の事だった。


「何だよこんな朝から、うるさいなぁ」


 寝ぼけ眼のイーノは欠伸(あくび)を噛み殺して応対する。


「外を、外をご覧ください!」


「はぁ~?」


 寝起きでうまく働かない頭を振って、イーノは選挙事務所の外へ。するとそこにいたのは、


「な、何だこれは!?」


 無数の市民と、無数の兵士達だった。


「え、何の騒ぎなんだいこれは!?」


「イーノ総督! また私にお金を恵んでください!」

「金が無くて何も買えないんです!」

「どうか、金貨の再支給を!」

「金を寄越せ!」


 兵士達が次々とイーノに直訴し始めた。


「おい、アンタ、アクラッツのパトロンだろ? もっと金を寄越さないと投票してやらねぇぞ?」

「私達は日々食べるものにも困っているのです。どうかお恵みを! 金貨10枚!」

「もっと金をくれ! 行きつけの飲み屋の姉ちゃんに魔晶石のネックレスを買わないといけないんだ!」

「身銭を切れ!」


 市民達も好き勝手な事を言いながらイーノに詰め寄ってくる。


「な、な、何が起こってるんだ!? おい、誰か、アクラッツを叩き起こせ!」


「ふわーあ、何だか朝から外が騒がしいですね」


 ちょうどいいタイミングでアクラッツも起きてやってきた。


「アクラッツさん、金!」

「金出せ!」


「って、どわぁ! ま、待ってください市民の皆さん!」


 アクラッツに殺到する市民。混乱を極める、選挙事務所前!

 一体何が起こったのであろうか。


「おい、おいおいおい! 誰か、誰か説明をしろよ説明を!」


 兵士と市民に揉みくちゃにされ服まで剥ぎ取られそうになっているイーノ。

 それでは読者の皆さんお待たせいたしました。説明しましょう。何が起こったのか。この暴動は一体、何なのか。


 アクラッツの現金バラ撒きに対抗してグレンはアイオミ区でより大きな金額のバラ撒きを行った。これによりアイオミ区というごく狭い地域だけに通常ありえないほどの富が蓄積された。貨幣経済が比較的よく整備されたヤンク王国領内ではあるが、これ程一度に大金を市民が手にする機会など普段はあるものではない。


 規模の大きな町で選挙が開催されるとあって、折しも様々な地域から出稼ぎにきた商人達が町には溢れかえっていた。彼らがこの好機を逃すはずは無かった。


 そう、起こったのは(ハイパー)物価上昇(インフレーション)である。


 地元の商店も、出稼ぎの露店も、皆が示し合わせたかのように物価を通常の数十倍~100倍以上に跳ね上げたのだ。普段なら銅貨で買えたはずのパン一個が銀貨や金貨を払わなくては買えないようになった。

 露店が売りに来る宝飾品や強力な装備品などは元々値段設定が曖昧で店主の裁量次第なところがあったが、金が町に溢れかえっていると知った時、彼らは商品に通常では考えられないほどの値段をつけた。

 

 こんなことをしてもなお、商品はちゃんと売れた。そこに暮らす人々にとっては、食料などの生活必需品は買わなければ手に入らないし、冒険者なら装備は絶対に必要だ。


 更に、グレンはより狡猾な手段に出た。自ら大金をはたいて、至る所の商品を買い漁り始めたのだ。


「あー安い! しかも質がいい! よし、金貨50枚で買います! お得ー!」

「このパンうんめぇー! たまらねぇー! 店にある全商品を金貨100枚でまとめ買い!」


 とにかく露骨なリアクションで金を払いまくり、しかも周辺にいた人々にも金を配って商品を次々と購入させていった。

 人々の購買意欲を煽り、物価上昇に合わせて手元にある現金を枯渇させる作戦に出たのである。これによって人々は狂乱状態に陥り、気づいた時には一文無しになっていたのだった。


 そしてもう一つ。

 ローリエを使った作戦についても説明しよう。


 だがここは第三章の大事なざまぁパートなので次回へ引っ張ることにする。

 乞うご期待!

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