第12話 作戦会議
その日の夜。
「ようやくお腹の具合が良くなってきました。今度から熟成肉を食べる時は充分に注意しますねっ」
「あれは熟成肉じゃなくて腐ってる肉だよ、ローリエ」
宿でこっそりと今後の作戦会議が行われようとしていた。
どこの町にもよくあるタイプの大部屋。二段ベッドがたくさん並べられていて、好きな場所で寝ることが可能だ。一部屋に二段ベッドが6つ。最大12人が寝泊まりすることが出来る。他の客が入ってくると落ち着かないので金貨10枚で一部屋丸ごと借り上げた。
「やはりエルフの自然治癒力は凄いです。私の回復魔法はほとんど必要ありませんでしたから」
と、ホーリィ。
エルフは人間よりも魔法適性が高い。その上、人間よりも遥かに優れた代謝機能、病気に対する抵抗力も備えている。また知能においても人間より高く、寿命もまた長い。彼らは200年とか300年くらいなら普通に生きる。中でも特に魔力に秀でた者なら1000年生きるケースもあるらしい。ドラゴン並みの長寿だ。
「で、これからどうするの?」
やはり場を引き締めるのはエリナの役目だ。
俺は全員が口を閉ざすのを待って、作戦の概要を説明し始める。
「みんなには明日からはゼンノさんと一緒に街頭演説に繰り出してもらうつもりだ。最初にリンチ区、ヘイレン区を回り、そこの住民達に話を聞いてもらおう。事前にゼンノさんから聞いたところによれば、この二区はエルフに対する敵意がそんなに高くないらしい。農業中心ののんびりした気風もあって、戦争には反対する住人も多いそうだ。多分、しっかり説明すれば理解してもらえると思う」
「あら、意外に普通な攻め方するのね?」
「俺がいきなり不正を働くと思ったか?」
「思うわよ。だってアンタ、やる気まんまんだったじゃない」
「ちなみに俺は明日からアイオミ区で金のバラ撒きを開始します」
「やるんかーい!」
「そのツッコミが気持ちいい!」
もちろん金はバラ撒く。しかも敢えて目立つようにやる。ちょっとぐらいイーノに嫌な気分を味わわせたいし、裏の意図もある。
明日は早朝から金を掘り起こしにいって、市内まで運搬してこないとな。荷馬車を何台か借りないと。最初はどれくらいバラ撒こうかな。
「あとパイパイちゃん」
「はーい!」
「君だけ別行動ね」
「ええっ!? 除け者!? どうしてですか!? このおっぱいが魅力的過ぎるからですか!?」
「うん、おっぱいは全く無関係だね」
「じゃあどうして……どうして……」
「君には特別任務を与えます」
「特別、任務? ゴクリ……エッチなやつだこれ」
「あぁ、エッチなやつだよ」
「えええええーっ!? 冗談で言ったのに! 遂にこの私に、エッチなことをするつもりですか? お待ちしてました」
「だがその前に、エロフについてもっと詳しく聞かせてくれ。それが今回の選挙戦、勝利の切り札になるかもしれない」