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第8話 金の力!

「お、お腹が……凄く痛いのぉぉぉ!!! ダメぇ!! 出ちゃうぅぅー!!!!」


 などという悲鳴を上げながらトイレに駆け込むローリエを宿に放置し、俺はエリナと共に町へ繰り出していた。念の為、回復魔法が使えるホーリィに看病をお願いしておいたが、魔法でどうこうする前に悪いものは全部先に出しておいたほうがいいということで、ローリエには今しばらく“頑張って”もらうことにする。


 あんな肉をガツガツ食ってりゃそうなるよ。食べなくて良かったなぁ、俺は。


「で、今日は何をするの? グレン」


「もう一度、ゼンノさんのところへ行く。そして投票当日の動きの確認をするつもりだ」


「投票当日の、動き?」


 エリナは怪訝な顔をした。そりゃそうだな。だって、投票日へ向けた動きではなく、いきなり当日の動きを打ち合わせするんだもんな。


「あぁ、そうだ。大事なのは当日に何をするかだ。正直、この町の人々の態度を見てたらゼンノさんが当選するのはまず不可能だよ」


「えーっ、アンタもう諦めてるの!?」


「いやいや、違うって。選挙の日までもう時間が無いからさ、今更選挙活動に精を出してももう遅いよ。正攻法での勝ち筋は無いと言っていいだろう」


「じゃあどうするの……ってアンタ、どうせロクでもない事するつもりなんでしょ?」


「おい、人聞きが悪いこと言うなよ。俺はただ、投票用紙を偽造したりしようと思ってるだけだよ」


「うわっ、やっぱりそういうのなのね!」


 エリナは引き気味だが、実際問題これくらいしなければ今の状態からの逆転はあり得ない。不正はするものとして、俺が考えておかなくてはならないのはそれが可能かどうか、そして最も効果的な不正のタイミング等々だ。


 ライネ市の5つの選挙区、その人口についてもゼンノさんから聞き出さなくてはならない。俺一人が動くだけでは、この5つの選挙区全てをカバーすることは出来ないだろうから、誰がどこで何をするか、俺はその中のどのポジションにいるべきか、精査をしていかねば。


 隣で冷ややかな視線を送るエリナを尻目にそんな事を考えながら歩いていると、向こうから“エルフの森を焼こう”の旗を掲げた兵士の一団がやってきた。


「ん、あれは……」


 兵士達は散り散りになって民家を一軒一軒訪ねているようだ。ドアを開け応対した住人に対し、兵士が何かを手渡した。


「へへぇ、お恵みありがとうございます。アクラッツさんに入れさせて頂やす」

「よろしく頼むぞ、有権者」


 兵士に肩を叩かれペコペコしている住人の掌の上に乗るのは一枚の金貨。


 現金のバラ撒きかよ!?

 白昼堂々、なんて露骨な!


 次々と住人達に金が手渡されていく。そしてホクホク顔の人々は兵士に対しアクラッツへの投票を約束する。


「アクラッツさんはいい人だなぁ」

「金貨を恵んでくださる」

「慈愛の人だ」

「焼こう」

「エルフの森!」


 皆が、金の魅力によっていとも容易くアクラッツ支持に回っていく。たった金貨一枚だぞ!?


 だが……そんなもんかもしれないな。生活が苦しい時に金貨一枚の価値は果てしなく重い、か。


 荒々しくドアを叩く兵士。


「いるのはわかってんオラーッ!」

「有権者コラーッ!」


「や、やめてください! 私は焼きたくない!」


 ドア越しに抵抗する市民を恫喝する兵士。おいおい、そこまでする!?


「金貨二枚渡すぞコラーッ!」


「いくら積まれてもダメなものはダメです! 私は焼きたくない!」


「金貨五枚渡すぞコラーッ!」


「是非とも一緒にエルフの森を焼きましょう!」


 籠絡(ろうらく)されやがった! 早い!


「金の力、か……」


 ふむ、現金バラ撒きはアリか。メモメモ。


「ちょっと、グレン。今、めちゃくちゃ悪い顔してるよ?」


「えっ!? 顔に出てた!?」


「出てたわよ! なんか邪悪な作戦でも思い付いたんでしょう?」


「そ、そんなことは……」


 ある!


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