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第3話 金の工面

「ほ、ほ、本気でこんなもん売ってくださるんですかァ!!? ダンナ!!!!!!」


 質屋の店主は、俺が麻袋から机の上にゴロンと落とした紺碧(サファイア)(ドラゴン)の胆石を見るなり、目をひん剥いて驚いていた。


「あぁ、ちょっと入用でね。あんまり表には出ない一品だと思うけど、いくらぐらいの値がつくのかな」


 店主は胆石を震える手で布でそっとくるんで持ち上げ、光に透かしてしげしげと眺めている。


 紺碧竜は水属性の魔法を操る竜であり、その体内で生成された胆石は強大な魔力を持つ。そして胆石を魔素にまで分解して再生成を行えば強い解毒作用を持つ成分や活力剤として有効な成分を取り出すことが出来る。


 また単純にその見た目の美しさから宝石や工芸品としての価値も高い。俺が持ってきたのは拳大の大きさのものだが、ただでさえ貴重な竜の胆石、しかもこのサイズは市場にはなかなか出回らないと推測できる。


 さて、いくらの値がつくか。


「……すみません、ダンナ。これほど見事な紺碧竜の胆石はウチでは買い取れませんぜ。金が足りません」


「えっ!? そうなの? 困ったな……。遠方まで旅に出ようと考えてるから出来るだけ手早く金の工面をしたかったんだが」


 俺はしばし考え込み、


「じゃあ、いいや。適正価格がいくらか知らないけど、今すぐ払えるだけ払ってもらって、それで手を打つよ」


 と言ってみたら店主が引っくり返った。


「ヒエッ! どれだけ太っ腹なお客なんですかダンナ!!! あっしは生真面目な商売人、ちゃんとした価格でしか買い取らない主義では御座いますが……大損しますよ? 本当にいいんで?」


「あぁ、別にいいよ。必要になったらまた取りに行くし」


「もしや……あなた様は名のある冒険者様でございますか?」


 急に店主の口調が丁寧になった。そんなに恐縮されるほとではないんだけど。


「いや、ただの薬法師だよ。違うか、元・薬法師」


「なるほど、薬法師様でしたか。上級の薬法師様であればこのような貴重な素材も日常的に扱われるのでしょうな。わかりました。では今すぐ用意できる現金、金貨200枚に加え脚の速い馬も用意致しましょう。それと、近隣の町までなら通行証代わりに使えるウチの紹介状も書かせて頂きますぜ」


「おー、助かる。充分過ぎるほどの対価だよ」


「何を仰いますか。これ程の胆石、本来は金貨300、いや500枚でも買い取り手がありますぜ。こんな破格で取引して頂けるなんて」


 金貨200枚なら上々だろう。俺がガキの頃なら銅貨一枚でパンが買えた。しばらく生活に困らないくらいの額ではあると思う。

 これに馬もつけてくれるなら充分だな。


 大量の金貨を麻袋にぞんざいに詰め込む様をぎょっとした顔で眺めている店主を尻目に、俺は質屋を後にした。宿に戻ってエリナの決心を聞いてみよう。


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