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第9話 ホ、ホーリィさん!そんなところを舐めちゃダメですっ!

「おい、やめっ、やめろよ! 急にそんな所を舐めて。ダメだぞ、汚いだろ!」


 俺が制止するのも聞かず、巨乳白魔導師のホーリィは起きているのか寝ているのかわかりにくい半眼で必死に舌を動かして、湧き水によって湿った岩に張り付く(コケ)を舐めていた。


「はむっ、でも……美味しそうだったので……。もぐもぐ、ペッペッ、いや、あんまり美味しくなかったです」


「当たり前だろ……」


「でももしかしたらこういう地下深くに生えている苔なら未知の成分を含んでいるかもしれませんので、念の為確認を」


「いちいち口の中に入れてちゃ埒が明かなくない? 魔法で分解して成分を調べてみたらいいのに」


「あっ、それもそうですねぇ。ごめんなさい、私、子供の時からすぐに舌の上で転がす癖が……」


 まぁ昔は俺もよくやってたけど。


 俺は苔を少しだけ毟って指先で崩し、左手の上に乗せる。無詠唱のまま魔素分解の呪文を使い、苔を微粒子へと分解、その目には見えない成分を調査する。


 薬法師がよく行うこの作業を、口で説明するのは難しい。俺自身、分解した成分を自分がどうやって術式に落とし込んで再構築しているのか、そのメカニズムはよく分からないのだ。


 昔から何となく俺には出来たし、他の薬法師の中にも説明は出来ないけど物心ついた時にはこういう作業が可能だったという者は何人もいた。


 ま、気にしても仕方ないことかな。


「とりたてて、特別な効果のありそうな成分はなし。この苔は単なる苔だね。巨霊亀(ホーライ・タトル)の甲羅に生えてる奴みたいな長寿の効能は無さそうだよ」


 右の人差し指を光らせ、壁面にいくつもの紋様を描く。これは魔素分解の術式、及びそれによって明らかにされたこの苔の主成分の一覧だ。だが魔導師が用いる専用の言語と一般的な書き言葉が混在していて、一読しただけでは何を意味するのか素人にはわからないだろう。


「こんな感じ。読める?」


 ホーリィは、元から細い目を更に細めて文字を追い、首を傾げた。それから近くの壁面に向かい、俺と同じように指先でゆっくりと術式を描いていった。


「ここを、こう……」


「なっ!?」


 思わず、上ずった声が出てしまう。この……術式は!?


「それから、こうしてこうなって……」


「す、凄い……まさか、これ程とは……!」


「はい、書けましたー!」


 誇らしげに大きな胸を張るホーリィ。


 壁に書き記された術式を眺め、嘆息(たんそく)する俺。

 何ということだ。俺は、この子を侮っていたのかもしれない。


「信じられん。俺より10倍くらいは上手いよ」


「えへへー、そんなに褒めないでくださいよ♪」


「いや、本当に上手だよ、字が」


「字」


「字が上手い」


「……」


「術式はめちゃくちゃだけど」


「ンゴーッ!」


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― 新着の感想 ―
[良い点] ンゴーッ? まさかホーリィさんのモデルはまんじ先生?
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