第3話 いよっ、大将!
「ふん、意外と謙虚な男だね君は! 気に入ったよ!」
冒険者パーティ“ウォーナイツ”の若きリーダー、ウォード・クロムウェルは、満足して頷いた。
俺が徹底的に下手に出て「どうか~何卒~パーティメンバーに~」とお願いしたからだ。
一応、薬法師であることと、攻撃・防御・回復等のいろいろな魔法が使えることは伝えた上で少し実演もしておいた。
「だけどこの僕の手を煩わせないよう、自分の身は自分で守ってくれよ。マガマガは中途半端な実力の冒険者では到底太刀打ちできないバンカラ屈指の危険なダンジョンなんだから」
「いよっ、大将! ご安心あれ、俺はウォードさんの周りをウロチョロしながら死なない程度にザコの相手とかしてますんで!」
ダンジョン攻略には全く興味なし! 俺はレア素材を獲得することのみが目的。ケブラ・アラクネの目玉もちょっと惜しいけどこいつらにくれてやるつもりだ。だが依頼書をどう読んでみても、ダンジョンにいるのが幼体なのか成体なのか書かれていなかった。おそらく、依頼者も詳細を確認できていない案件=それだけヤバい案件ということだろう。
「変な男だね君は。これから生死をかけた戦いに赴くというのにその態度は何だい? 緊張感が無さすぎるよ。戦場では油断した者から命を落とすからね、この言葉をよく覚えておくといいよ」
「あぁ、ウォードの言う通りだぞ。決して油断はするな。それとこの俺の」
ノリスは背中に縄でくくりつけた大斧を誇示し、
「大戦斧の間合いに入らないようにしろよ。挽き肉になっちまうぜ」
恐ろしげなことを言った。ううむ、確かにパワーはありそうだが頼むからしっかり狙いを定めて斧を振るって欲しいところだ。誤って魔晶石を叩き壊さないように。それと狭い洞窟内で無闇に斧を振り回すのは感心しないが……まぁ俺が避ければいいか。
「早速、明日の朝からマガマガ・ダンジョンへと突入する。相当深い階層にアラクネはいるだろうから、各自、今日はしっかり休んで備えよう」
「おいウォードよぉ、結局ホーリィはどうするんだよ、連れて行くのなら探さねぇと」
ん、ホーリィ? そういや3人パーティだって言ってたな。他にも仲間がいるってことか。
「あぁ、そうだったね。全く、一体どこに行ってしまったのやら。僕もノリスも魔法はほとんど使えないから、気配を探知するのも無理だね。世話のかかる女だ」
「ねぇ、グレン」
ひっそりと俺に耳打ちするエリナ。
「ん?」
「ローリエ、忘れてない?」
「あ!」
完全に忘れてた! このままウォード達と一緒に宿で休んで、ダンジョンに突撃するつもりになっていた。アイツを連れてこないと。
「ん、どうしたんだい君?」
「ウォードさん、実は俺のパーティメンバーも一人、別の場所にいまして」
「なんだ、君もなのかい。構わないよ。どうせ僕らもホーリィを探さないとダメだし、まずは君のお仲間から迎えに行こう」
というわけで俺達は連れ立って、ローリエが働かされている酒場へ向かうことになった。