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第1話 エリナの新しいドレス

「バンカラはやっぱりデカい町だなーっ!」


 堅牢な造りの小橋の欄干に寄り掛かり、砂漠蜥蜴(デザート・リザード)の肝焼きに舌鼓を打ちつつ美しい運河沿いの光景を眺めていると、自然と心が浄化されてゆくのを感じる。

 美景、美味、そして……。


「どう? グレン」


「うわぁ……お前、なんか急に大人びたんじゃないか?」


 煌びやかな宝石がちりばめられた真っ赤なドレスの裾をふわりと風になびかせ、俺の幼馴染、エリナはにっこりとほほ笑んだ。立派に成長した胸が「お前を圧殺してやる!」!と言わんばかりの勢いで主張してくる。素晴らしすぎる!


「やっぱり……ちょっと見栄を張りすぎちゃったかな?」


「いやいや、そんなことはない。素敵だよ、冗談じゃなく本心からそう思う」


「あら、そんなお世辞、言えちゃうんだ」


 お世辞は宮廷生活で慣れた。ひどいコーディネイトの奥様方にも俺は全力で媚びることができるのだ。どーだ、凄いだろ。でもエリナは本当に綺麗になった。ボロボロの継ぎ接ぎだらけの服を着ていた時とは大違いだ。


 ちなみにこのドレスのお値段、金貨30枚です……。普通にそこらの王族が贈り物として購入するレベルの逸品。お店で値段を聞いて心底驚いたが男のプライドが邪魔をしてついつい「いいぜ、買えよそれ」とか言ってしまったのだ。バカ、俺のバカ!


 エリナの体形に合わせた仕立て直しを待っている間、ここで軽食をしながらぼーっと運河を眺めていたわけだ。


「ねぇ、グレン」


「ん?」


「あの、さ」


「うん」


 なんだ、モジモジしちゃって。いつもの覇気がないな。


「ありがとう、この服……ずっと大切にするね」


「あぁ、別にいいよ礼なんて。俺の方こそ、無理にお前をあてのない旅に誘っちゃって悪いと思ってるし」


 一応、エルフの国を目指すというざっくりとしたプランはある。でもアルフヘイムにすんなり入国出来てのんびりした暮らしを送れるという保証は全くない。もしかしたら拒絶されるかもしれないし、道中で何らかのアクシデントにより命を落とすかもしれないのだ。

 よくぞ二つ返事で俺についてきてくれたものだ。エリナには本当に感謝している。


「グレン、あのね、私……」


 エリナは思いつめた表情で俺を見上げ、そして……。


「きゃあーーーーーー!!! 誰か助けてください!!!」


 背後からいきなりの叫び声!

 驚いて振り返った俺の目に映ったのは、ぶるんぶるん揺れるおっぱい、じゃなかった! 柄の悪そうな男達に追いかけられているローリエの姿だった。


「おい、また何かやらかしたのか!?」


「違うんですぅ! お酒を、お酒を飲んだだけなんですよぉー!!!」


「そこのアンタ! この無銭飲食のエルフの女を捕まえてくれ!!!」


 男のうち一人が俺に向かって言った。


「お前が悪いんじゃねぇか!」


「ぐえー!」


 俺は逃げようとするローリエを捕まえて、男達に突き出した。


「ほれ、金が無いなら店の手伝いか何かして償え」


「ひ、ひどいですグレン様ぁ……。この私がどんな目に遭っても構わないと言うんですか? この人達に散々エッチなことをされて心に一生消えない傷を刻まれても……ん? エッチなこと? あ、そうだった! 体で払いますので、この私を好きにしてください」


「「いや、体じゃなくて金を払えよ」」


 奇遇なことに俺と男達の声が被って、ローリエが「ぐぬぬ……」と表情を曇らせた。

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― 新着の感想 ―
[良い点] いや、金を払えよって思ったら全員から言われてて笑いました。 [気になる点] というかそういうのは女の子の方からは言わないものだよ [一言] 清楚とは?
[良い点] ローリエいいキャラしてるな~ 面白ビッチエルフって所ですかね?
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