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二重人格王子Ⅲ~異世界から来た俺は王子と砂漠を目指す~  作者: さつき けい


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17/72

17・転移者は教会で発見する


 今回、俺たちは小鬼に会うことはなかった。


この前、俺が狩り過ぎたせいで警戒されたのかも知れないな。


俺の手元には、元の世界でいうと中型犬くらいの大きな兎が二匹と、生け捕りにした鳥が一羽。


 でも、こんな弱い獣じゃ「返り討ちにした」にはならないんじゃないかなあ。


そう思ったけど、持ち込んだら食堂の親父さんには「兎一匹と引き換えに黙っといてやる」と言われた。


「ありがとうございます」


俺たちは兎一匹を置いて、残りの一匹を食堂で教えてもらった肉屋へと持ち込んだ。


「お前たちが狩ったのか?」


「いいえ、狩ったのではなく、向かって来たので返り討ちにしただけです」


俺はトニーに説明させる。


子供たちのほうがまだ信憑性があるからだ。


 肉屋の店主はチラチラと俺を見ながらもさばいて、肉と毛皮や他の物にと分けてくれる。


もちろん不要な部分は捨ててもらう。


手数料として肉の一部を渡し、毛皮と肉の残りを返してもらう。


店主はリーダーの少年のことも知っていたらしく、声をかけていた。


「また返り討ちにしたら持って来い。 引き取ってやる」


俺はその言葉にニヤリと微笑む。


その後、俺たちはドワーフ娘のところへ寄った。


「練習用の短剣をもらいましたからね。 これはこの子たちの練習用に狩った獲物です」


兎の皮をお礼にと渡すと喜ばれた。




「お土産です」


俺は捕まえた鳥を旧地区の地主の屋敷に持ち込んだ。


「おお、立派な鳥ですな。 ありがとうございます」


ロイドさん夫婦が喜んで受け取ってくれた。


まだ生きているので飼うことも出来る。 好きな時に料理してもらえばいい。


「珍しい鳥なのですか?。 少し魔力があるようですが」


俺はロイドさんに訊いてみた。


実は、殺さずに持ち帰ったのには理由がある。


この鳥は魔獣、とまではいかないが、魔力を帯びていたのである。


「ええ、この土地には古くからいる鳥ですな。 卵も非常に美味ですよ」


ほお、今度行ったら絶対雌を探そうと決意する。


「しかし、魔法柵の外にいましたよ?」


俺が町の近くで見つけたと言うと、ロイドさんの顔が曇る。


「この土地の魔法柵はあまり効果がないようでしてね。


兵士や猟師は住民に被害がない限りは森へは入りませんし」


作物や家畜の被害くらいでは動いてくれないらしい。


「食堂に若い猟師たちの姿は見えましたけど、彼らはどうです?」


ロイドさんはため息を吐く。


「この町に来る猟師で腕の良い者などいません。 他の町でやっていけないから来るのですよ。


しかし、この町に来てみれば小鬼が多い。


結局、森には入らず、ああしてたむろしているだけです」


なるほど。


俺たちを横目で見てはいたが、うらやましがるだけで自分たちでやろうという気概は感じられなかった。


ミランによろしくと告げて、俺はリタリたちが待つ教会へと向かう。




 その夜は新地区の子供たちも呼んで肉を振る舞った。


「猟師になりたい者はいるの?」


この町にはあまり腕の良い猟師はいないらしい。 いないなら育てれば良い。


リーダーの少年は「なりたい」と返事をする。


他の子供たちはやはり危険だということで顔を見合わせている。


まだ子供。 これからどう生きるのかは彼ら次第だし、俺は彼らがやりたいことを応援するだけだ。


これからも森へ行く時はリーダーを連れて行くことになった。




「あのね、ネス」


新地区の女の子が俺に話しかけて来た。


「私たち、網元のところで魚を捌く仕事をしてるんだけど、良かったら」


そう言って魚を持って来てくれた。


ほとんどが小さ過ぎるとか傷が付いていたりで売り物にならないものだ。


「ありがとう。 助かるよ」


彼女たちが働いている網元は旧地区の入り口、広場の一番海側にある。


新地区の塒が遠いならこの教会から通ってもいいよと言ってるのだが、他の子供たちもいるので遠慮していた。


俺は彼らが新地区へ帰るのを手を振って見送った。




 早朝、いつものように箒を持って外に出ると、リタリや教会の子供たちがすでに起きていた。


俺の箒を奪って掃除を始める。


きっとリタリと打ち合わせしていたんだろう。


男の子二人は、教会の中の机や椅子を拭くための雑巾と桶を俺から奪って行った。


「今、教会に住んでるのは私たちだから、私たちがやらないと!」


リタリがそういうので任せることにした。


パン屋の近くに確か雑貨屋があったから、後で寄って小さめの箒を作ってもらおうかな。


 水くみに行く彼らに荷車と桶を貸してやり、俺は自分の家の掃除を始めた。


とにかく少しの風が吹くだけで砂が入り込む。


王子が扉や窓に魔法陣で<防砂>をかけているが、やはり人が出入りするとどうしても砂は侵入して来るのだ。


教会もまた同じである。




 水くみが終わり、パンが届く。


朝食が終わる頃に新地区の子供たちがやって来て、混ざって体力作りを始めた。 


 それを横目に、俺は教会の裏の物置を開ける。


ここを片付ければ子供たちが寝泊まりするのにちょうど良い。


「これはすごいですな」


ついて来てもらったロイドさんが唸る。


埃や砂だけじゃなく、虫や小さな動物まで入り込んでいる。


「とりあえず、全部出しますので」


俺はそう言って鳥をバンダナに戻して口元を覆う。


曲がりなりにも教会の物なので、少しずつ丁寧に外へ出していく。


出した物をロイドさんに見てもらい、捨てるかどうかの判断をお願いすることにしている。


 ほとんどが壊れた家具や飾ってあったらしい装飾品のたぐいだ。


「何やってんだ」


昼間っから酒の匂いをさせたミランも顔を見せる。


「教会の備品って地主の権限でどうにでも出来るんでしょう?」


と俺は訊いてみる。


「ああ、人がいない教会はな。 ここは何十年も前に放棄されてるから別にかまわねえよ」


というわけで、遠慮なく運び出す。


子供たちも見に来るが、危ないので見張り役のトニーが引きずり戻している。


ロイドさんの側には仕事中のロシェがいる。 フフはリタリと一緒に他の子供たちと遊んでいた。




 ほぼ全てを出し終わり、俺は教会から皆を遠ざける。


「魔術を使うので、しばらくは近寄らないでください」


バンダナで顔の半分を覆ったまま俺はロイドさんたちに注意する。


魔術と聞くと子供たちも傍から離れる。


(王子、弱めで頼むよ)


『任せろ』


掃除用の魔術は何度も使っているので性能は上がっていると思う。


<清掃><消毒><復元>


ゴウッと閉じた扉の中から音がする。


ミランは気になるのかじっと見ているが、俺とロイドさんはその間に積み上げられた備品をり分けていく。


「これは直りそうです」


使えそうな家具を残し、跡形もなく崩れた物は焚き付けにする。


装飾品や絵画などは必要ないのでミランに引き取らせようと思う。


「あー?、こんなのいらねえぞ」


ボロくなった絨毯を指差すミランに、「ちゃんと直しますよ」と俺は答える。


品物自体は高級品だったのだ。


長くしまい込まれ、放置されていただけである。 勿体ない。


<清掃><消毒><復元>


「ね?、悪くないでしょ?」


宗教画が描かれた絨毯を俺はミランに見せる。


「いやいやいや、こんな柄の絨毯の上で生活なんぞ出来ん」


あー、そういうことね。


「じゃあ、新地区の教会にでも寄付しましょうか」


そう言って俺は新地区の子供たちに、帰りに教会へ届けてもらうことにした。


ミランには絵画や置物を引き取ってもらった。


 俺にとっての収穫は本棚があったことだ。


さすがに本はあまりないが、ノースターでやったことを思い出しながら、いずれ増やしていこうと思う。




 キレイになった物置、いや、元々は神官さんたちの居室だった場所に入る。


中には何もないのでガランとしている状態だ。


一応<復元>しているので壁や床は直っている。


 この部屋は教会の神像が祭ってある壁の後ろになる。


本来なら、ここには教会内部へ行き来する扉があるはずなのだが、それがない。


窓もないし、入り口以外の扉も無い。


普通の教会なら居間と寝室の二部屋があるのに、その間の壁も全て取り払われていた。


まるで最初から物置にすることが前提だったような部屋だ。




「おや?、これはー」


俺は以前、ノースターで教会を修復したことがある。 その時には見られなかったものがそこにあった。


壁のほぼ中央。 神像の真裏に当たる場所。


子供の背丈ほどの神像を乗せる台座があり、その台座の中央に小さな窓のような四角い扉がある。


『気を付けろ。 魔力を感じる』


王子の言葉に俺はビクッとした。


それに気付いたのだろう、ミランやロイドさんも恐る恐る近づいて来た。



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