夢覚めて
このままでは学校に遅れるけど
からだが動かない 意識が戻ってこない
どれだけ禍々しかろうと異層の世は
まぶたが開くのと同時に跡形もなく
はじけ消える
はずなのに、今もその層は俺を捕えて離さない
本体は物陰にもいないというのに
このままでは学校に遅れるけど
からだが動かない 意識が戻ってこない
何人もの人が燃えている
火だるまがいくつもある
個々の炎の中で人体は黒い塊と化している
そのどれもが自転車に乗ってこぎ続けている
動くことで身体の火を消すらしい
だけどこんな真夏の高気温のなかでは
そんなことしても徒労でしかないと気づかないのだろうか
並木の遊歩道を何十台もが
服も着替えられない
夢の余韻が骨髄に凍み付いている
行動が麻痺している
脳が破損している
夢の中ではその世界に現実の感触があったよう
この現実の中にもまだ夢の感触がある
本当はまだ起きていないのかもしれない
表情も炭化した死体が車輪を回す
車輪は活力良くアスファルトの上で回る
動き続けていないと意識を保てないようだ
火の塊がまばらに並びながら同じ方向へと進んでいる
あまりの高気温にあちらこちらで陽炎が発生している
芝繁る広場で一台が倒れた
澄み渡る青空に太陽は元気に輝いている
未だ燃え続けている人に話しかける
燃えている人はみな爆破テロに巻き込まれその火が引火したのだそうだ
芝を焦がしながら犯行国への憎悪を露わにしている
その人の瞳に白目は無かった
このままでは学校に遅れるけど
からだが動かない 意識が戻ってこない
ようやく学校に着いた時には
もう誰もが下校していて
窓から忍び込んだ夕焼けが
誰もいない無音の教室を赤く潰しきった後だった




