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サザンクロス[Southern cross]   作者: 筍タケノコ
消えた父の謎
4/5

#4 芽生えた"怒り" 目醒めた"力"

 僕は「いってきます」と言うのと同時にドアキーに腕をかざした。ピロンと家出のお知らせが鳴る。するとレイが首をかしげる。


「これって何?」


「ん?あぁ、これはドアキーっていうんだ。最近ウチに取り付けたばかりなんだけどね。ドアキーは家の出入りする人を管理するんだ。登録した人しか入れないようになっていて、何時に何処を出て何時に何処につくかメッセージが送られたり伝えたいこともこれに書き留めておけるんだ。」


「へー、そうなんだー。でも私は登録してないよ?」


「大丈夫。登録をしてなくても、している人が承認すれば出入りが可能になるんだ。」


「ホントに?それはスゴいね‼」


冷たい風に負けないくらい、レイは嬉しそうにとても暖かく笑った。

 それにしても、さっきの出来事が思い出される。父さんについて話す事を躊躇った母さん、風のように冷たく脅したかのような声、これから会いに行くウィング伯父さん。母さんがウィング伯父さんは父さんの事を知っていると言っていた。でも、父さんとウィング伯父さんに面識はないはずだ。一体ウィング伯父さんは父さんの何を知っているのだろうか。それ以前に、母さんが躊躇う理由が分からない。さっき母さんは、


『残念だけど、私の口から何も言うことはできないわ。たとえ、あなたが家族の一人だとしても。お父さんも()()を望んでいないわ。』


と言った。意味が分からない。それではまるで父さんが自分の事を知られたくないような言い方ではないか。

もう今日はいろいろとありすぎて体力的にも精神的にも疲れが溜まった。宿に着いたら、少し休ませてもらおう。僕には分からない事が多すぎる。

 気が付けば商店街。ここは近未来的要素が一つもない。相変わらず人通りは少なく店も人も昔から変わらないのがほとんどだ。この通りを抜ければ宿が見えてくるだろう。しかし通りは長く、なかなかここを抜けられない。レイが少し疲れてるように見える。


「大丈夫?疲れちゃったよね。ちょっと休もっか。」


「うん。ありがとう。」


飲み物を買ってくると言ってレイをベンチに座らせ、自動販売機に行った。やはり暖かい飲み物はどれも売り切れていた。小さいジュースを2本買おうとしたその時、後ろでお金の落ちた音がした。振り向くと少し顔が丸く茶色の上着を羽織っている中年ぐらいの男が慌てて小銭を拾っている。小銭を使うなんて珍しいなと思いつつ、僕も何枚か拾うと突然


「痛ぇえんだよぉ!!!」


と荒い叫び声が近くで聞こえた。どうやら男がその後ろの青年の足を踏んでしまったらしい。


「何すんだテメェ!ふざけんなよ!」


「あ、すまんな。」


「はぁ?オッサンそんなんでオレの痛みが治るとでも思ってんのか!」


怒った青年はズボンのポケットに手を突っ込んで声を荒げている。見た目と違って青年はものすごく短気そうだ。少し驚いてしまった。しかしいくら何でも言い過ぎだ。


「しかもなんだよその謝り方は!オレに危害を加えておいてその謝り方はないだろ!」


「そりゃ、悪かった。」


「違ーよ!そんなんじゃなくて、頭を地面につけて謝れっつってんだよ!このクソジジィがぁ!」


僕は自分に言われた訳でもなければ、この男とも話した事がない。なのに、それなのに、怒りを感じる。そして、また僕の中の()()が破けて弾けた。


「うるせぇよ。」


「なんだテメェ。ガキは突っ込むんじゃねぇよ!」


「もうちょっと人のこと考えろよ。」


「んだとぉ?···な、なんだ。煙が出てやがる!」


「この人は謝ったんだ。アンタの痛みはいつか治っても、この人の心の痛みは治んねぇかもしれねぇんだよ!」


「うるせぇ!部外者が、しかもガキは入ってくんじゃねぇよ!」


青年は拳を自分の顔をめがけて飛んできた。体は即座に反応し、そのパンチを避けた。そのまま僕は青年の腹に一発、食らわせた。


「ゴフッ!」


すると突然僕と青年の間の空気が破裂のようなものを起こした。青年はそのまま向こうのごみ袋に思いっきり吹き飛ばされた。僕もその影響で後ろの自動販売機に頭をぶつけた。当たりどころが良く頭はそこまで痛く感じなかったが、何よりその時に誰も通っていなかったことが幸いだ。今考えてみれば、あんなに言われていた男はそれほど困ってそうでもなければ、怒ってそうでもなかった。ただ返す言葉も無さそうで、呆れた顔をしていた。


「ありがとうな、若い者。おかげで助かったわい。」


「いえいえ。なんか許せなくて、ああいう人。しかもやり過ぎちゃった感じがあって。申し訳なく感じてきてしまいました。」


僕は忘れないうちに自動販売機に腕をかざして2本ジュースを買った。僕が去った後、男は一枚一枚丁寧に小銭を入れた。レイのいるベンチに戻るとき、店の人は僕を見かける度変な目で見る。まぁ、仕方がないと言えば仕方がないかもしれない。


「なんか大きい音がしたけど大丈夫だった?」


「あ、あぁ。大丈夫、大丈夫。それより早いところ行っちゃおう。母さんだって待ってるし。」


「うん。行こっか!」


というのも早く商店街を抜けて、変な目で見られない所に行きたいと思ったからだ。

 僕はあの青年の言った


『んだとぉ?···な、なんだ。煙が出てやがる!』


という言葉と突然空気が破裂したことに疑問を持ったが、考える事が多いことに気付き考えるのを止めた。今はレイと一緒にウィング伯父さんに会って、父さんのことを聞かないと。

 一口、ジュースを飲んだソウル達はまた宿へ歩き出した。

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