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7 思春期

 星奈が中学二年になると、また家庭の中に緊張感が生まれ始めた。

兄の修一が大学を受験するためだ。

修一の学力は難関高校の中でも安定していて、今の調子を崩さなければ希望する医学部への合格は間違いない、と言われているが、安心感があるわけではない。高校受験以上のプレッシャーを、母の奈保子が一番感じているようだ。


 奈保子は修一が幼い時から病弱で、つきっきりになることも多く、専業主婦で家にずっといる。

 元々は銀行員で父の伸二とは職場結婚だ。

修一が小学校に入学すると同時に、復帰を望んだが、結局かなわず集中力を修一に注ぐこととなった。

完璧主義なところがあるので家事に手抜きはなく、本人も身綺麗だ。

 伸二や修一はこのこざっぱりとして清潔で快適な生活環境と綺麗な奈保子に全く不満はないだろう。

 放任気味で育った星奈にさえも不満はない。少しだけ、家族の輪の中から、片足がはみ出ているかもしれないと思う程度だ。


 修一の志望大学は県内にあり、おそらく家から通学する。医大生になり研修医になり――奈保子はサポートするつもりでいる。(いつまでこの生活が続くのだろう)星奈の素朴な疑問だ。

 物心ついたときから、ずっと同じ環境で同じ毎日を送っている気がする。星奈も来年、受験生だ。どこの高校に行くかはもう決めてある。

そして変わることもなく変えられることもないだろう。

 感情が冷めていることも、何かを諦めているつもりもないが、自分には反抗期がなかったことに気が付いた。

 友人で同じ部活動仲間、新田美優は最近イライラすると言っていた。母親の言動にはむかつくし、父親の存在は不愉快らしい。


 ベッドに寝ころんで薄いブルーのシーツの色を眺め、カーテンにも同じ色を認める。ブルーが好きな星奈はファブリックも洋服も小物も青や水色が多い。「あっ」と小さく短い声を出し、そういえば☆乙女☆を、なぜピンクにしたのだろうかと考えた。

もしかしたらあれが思春期唯一の葛藤と矛盾によるものだったのかもしれない。可愛くなりたかったのかもしれない。


 星奈は丸顔で一重の丸い目が優しい印象を与えるが、すらっと背が高く可愛い女の子とは言い難い。頑張ることも恥ずかしくショートヘアだ。

 現実の星奈と違うコケティッシュな☆乙女☆はそれでも星奈自身なのだ。


 そのうちに兄の修一にも反抗期がないことに気づいた。彼は誰かに反抗するよりも、まず自分自身の克服に忙しかったのかもしれない。

(お兄ちゃんがKRやるならどんなキャラにするだろう)修一が選ぶキャラクター、職業の選択を色々考察しているうちに眠りについていた。

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