表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
月に水まんじゅう  作者: はぎわら 歓


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

38/41

38 伸二と孫・1

 修一と真琴の間に赤ちゃんが生まれた。

女の子だ。

二人は結婚後すぐに片桐家で生活をし、奈保子が相変わらず生活の面倒を見ていた。

つまり真琴と星奈が入れ替わっただけだ。


 真琴はあまり社交性はなく、伸二と奈保子に可愛がられようとすることはなかったが、

働き者で余計な口出しをせず、奈保子の家事に感謝をしていたので、同居は上手くいっていたようだ。

しばらく大人四人で落ち着いた生活が続けられていた。

そのバランスを打ち破るのが赤ん坊だ。


 春に生まれ、『桜子』と命名された彼女は、静かな毎日をたちまち喧噪な状況へと変えていく。

看護師としてハードワークではあったが、なんとか出産満期まで真琴は元気よく働くことが出来、安産であった。

その安穏とした妊娠生活に油断をしていたのかもしれない。


 桜子はよく乳を飲みよく泣いて暴れた。

産後二か月弱で復帰を果たした真琴も、この夜泣きにはまいってしまった。

勿論、修一もこたえた。


 昼間は奈保子が桜子の面倒を見ているので、問題はないのだが夜泣きがひどく、労働で疲れた体を休めることが厳しかった。


 

 夜中に泣き始めた桜子を抱き、真琴はぼんやりとした頭で

半べそをかきながら庭へ出た。

今夜は修一は夜勤でいない。

それがせめてもの救いだろうかとぐずる桜子を揺する。


 実際に桜子の夜泣きは、大地を揺るがすような、ひどいものではなかったが、修一と真琴にとって相当の騒音だった。

同じ住いの伸二と奈保子には『また泣いてるのね』という程度のものだ。

集合住宅じゃなくて良かったと思いながら、揺する手を停めると、

桜子は「あああーんんんー」とぐずりだし、慌てて真琴は「よしよし」と、左右に揺すった。


 途方に暮れていると、つつーとサッシが空き「あれ、真琴さん。どうしたの?」と、伸二が立って声を掛けた。

「あ、お義父さん、すみません。起こしてしまって、桜子が……、寝てくれなくて……」

「んん?どれ、じいちゃんとこ来てごらん」

 言われるままに真琴はつかれた腕を差し出して、桜子を渡す。


「桜子ぉー?じいちゃんがわかるかあ?いいこだなあ。かわいいなあ」

「あむぅ、むむぅ、あーあー」

「ほう、よく話すなあ。あーあ、うーう。むーむ」

 伸二は桜子の音を真似て返す。

「あうーう、あむぅ……。……」

 しばらくすると桜子は寝息を立て始めた。


「えっ、寝たんですか」

「しぃー。寝たみたいだよ。ほら」

 伸二が差し出すと、真琴は思わず両手を振って「また、起きたら……」と不安げな顔をした。

「大丈夫だよ、ほら」

「は、はい」

そっと柔らかい桜子を抱き、すぅーっと言う寝息を聞き、真琴は安堵で涙をこぼした。


「お義父さん、ありがとうございます」

「いやいや。星奈も結構ぐずりでなあ。俺が寝かしつけてたんだ。

また困ったら桜子連れておいで。もう定年して俺も暇だしなあ」

 伸二は定年退職をして、なんとなく家と公園をぶらつき、庭を少しいじる毎日だった。

暇なのでアルバイトでもしようかと考えているところだ。

「また、夜、お願いしてもいいでしょうか」

「いいよー。真琴さんも早く寝なさい。あんたは丈夫そうだけど寝不足じゃ疲れちゃうよ」

 のほほんと部屋に戻る伸二の後姿を見ながら、真琴は産後、初めてほっとした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ