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月に水まんじゅう  作者: はぎわら 歓


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14/41

14 リアル月姫

「どうだったの?」

 名古屋まつりに月姫と行ったあと、美優に報告をする。

「楽しかったよ。合戦が面白くてさあ」

「そうじゃなくてっ!」

 美優の聞きたいことは分かっている。月姫がどういう人間か、また星奈がどう思ったのか、が聞きたいのだ。

「なんか草食っぽい感じで優しい人だったよ。身長が同じくらいでさ、ずっと知ってる従姉みたいな感じだった」

「ふーん……。で?」

「でって……」

「付き合ったりしないの?」

「うーん。相手はまた遊ぼうって言ってくれたけど」

「星奈の気持ちはどうなのよ」

「ちょっとドキドキしたかな。まだわかんない」

「そっか。ブラコンの星奈にも、ついに彼氏ができたと思ったけどな」

 美優の鋭い突っ込みに、ドキリとした。星奈は単に人よりも恋愛感情が希薄なだけだ、と自分で思っていた。

 しかし美優の言葉で、自分はずっと兄の修一を追いかけてきたことに、改めて気が付いた。そういえばネットゲームで好きになったミストは、どことなく優しくてなんでも知っている修一にキャラクターが、かぶる気がする。 

 ただその恋愛感情は代替品でしかなかった。ミストは魅力的だったが大人の男過ぎた。

夜空を見たときに、時たま見える星なのだ。

「美優。でも、なんかさ。お兄ちゃんから卒業できそうな気がするんだ」

「おおー!いいじゃん!今はそれで十分だね」

 美優は、ぱっと顔を明るく輝かせた。(美優。綺麗になった)

 星奈も美優も食品を扱うため、お揃いのように髪はショートで化粧っ気もない。それでも美優は和弘と付き合い始めてから、志を持った少女から、しなやかな女性へと変貌を遂げているように思える。

「ありがと」

二人はグラスをチンと鳴らして乾杯した。


 月姫のことを想うと、胸が高鳴るのを感じる。会ったとき、ゲームの中のキャラクターとそんなに違和感がなかった。

 卵型の白い滑らかな肌に、中性的な細い肢体。色素の薄い茶色い髪と、奥二重の優しい黒い目。

シャツにジーンズだったが、白い月姫のローブを着せても似合うだろう。

 ただ声は柔らかいが異性のものだった。そして細くても、喉ぼとけと肩に男らしさを感じた。

混雑した祭りの中で、星奈は月姫に身体を預けることがあったが、全く不快感はなかった。

友人の和弘ですら、近寄らせたことも近寄ったこともないパーソナル領域を月姫とは簡単に超えられた。

 男なのに、異性なのに、全くその日から馴染んでしまうほど、月姫の存在は星奈にとってナチュラルだった。 

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